岩松 暉著『二度わらし』41


アジ化ナトリウム

 テレビのニュースが新潟のアジ化ナトリウム事件犯人逮捕を報じた。お茶のポットにアジ化ナトリウムを入れたため、知らずに飲んだ人が痺れを訴えて入院した事件である。その後、三重大学や岡崎国立共同研究機構などで起こったそっくり同じ手口の一連の事件の引き金となったとの解説があった。
 これらの事件が研究機関で発生したことに問題がある。薬品の管理がずさんだったことはさておき、「そっくり同じ手口」というところが一番ゆゆしい問題である。独創性をもっとも重んじるところで、人真似をするとは情けない。しかも岡崎などは日本の学術のトップを行くことを期待されて作られたCOE(Center of Excellence)である。これでは日本の行く末が心配だ。それに仮にいたずらとしても、他人に肉体的危害を加えることになると想像できないようでは、あまりに幼稚であり思慮が足りない。研究には深慮熟考が不可欠である。もしも犯人が研究者や研究者の卵だとしたら、ルーチンのデータ出ししか出来ない三流の研究者であろう。
 もちろん、独創的な完全犯罪をやれと言っているわけではない。念のため。

(1999.2.11 稿)


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更新日:1999年2月11日