岩松 暉著『二度わらし』40


3年在職率

 大学を評価する基準の一つに就職率がある。先日卒業生がやってきて就職率の話になった。彼によれば、癌の5年生存率と同じように3年在職率という指標を使うほうがよいのではないかとのことだった。つまり、入社後3年以内に退職しなかった人の割合である。今の子供たちは現状に自分を合わせるのではなく、自分は変わらずに周囲が自分に合わせるべきだと考えている人が多いから、厳しい現実社会に嫌気がさして、入社後すぐ辞める割合がかなり高いらしい。大学でどのような教育を受けてきたかがすぐわかりますという。それは幼児期の家庭教育のせいで、大学のせいにされては困ると抗弁しておいたが、卒論も一昔前に比べたら要求水準がぐっと低くなったのは事実である。あなた方が学生だった頃のように厳しくしたら、ノイローゼになって登校拒否になるか、すぐキレて刺されるよ、と笑い話になった。しかし、実際にいじめなどが大学でも話題になっているから、早晩、笑い話では済まなくなるであろう。

(1999.2.11 稿)


前ページ|ページ先頭|次ページ

連絡先:iwamatsu@sci.kagoshima-u.ac.jp
更新日:1999年2月11日