岩松 暉著『二度わらし』42


専業主婦

 半分眠りながら布団の中でポケットラジオを聴いていた。NHKラジオ深夜便のワールドネットワークという番組である。カナダやアメリカでは、専業主婦は若い女性の憧れの的との話で、びっくりして目が覚めた。専業主婦を妻に持つことは男性のステータスシンボルでもあるという。NHKの女性アナもやはり耳を疑ったのか聞き返していた。
 時代は変わったのである。第二次大戦時、戦場にならなかったアメリカ大陸は、戦後の世界をリードしてきた。1960年代は黄金のアメリカと言われたものである。ケネディやアポロに象徴されるように、若々しい活力にあふれていた。それを実現したのは自由競争の原理である。実力さえあれば、誰でも億万長者になれる。女性もウーマンリブを標榜、積極的に社会進出し、アメリカの発展を支えた。しかし、光があれば影がある。シングル・フリーセックス・エイズ蔓延と続き、家庭崩壊・少年非行・ドラッグなどさまざまなマイナス面が噴出してきた。それに競争社会にうち勝ち、エグゼクティブの仲間入りできたのはごく一握りで、大部分は落伍した。競争に疲れ果て、もう一度暖かな家庭が恋しくなったのだろう。
 翻ってわが国ではどうだろうか。いつも10年以上遅れて欧米の後を追いかける。今また実力主義の到来と大合唱、ギスギスした競争社会になろうとしている。文明開化以来、欧米崇拝の猿まねが習い性となったのだろう。何も前車の轍を踏む必要はない。日本らしい真に心豊かな社会を築けないものだろうか。

(1999.2.28 稿)


前ページ|ページ先頭|次ページ

連絡先:iwamatsu@sci.kagoshima-u.ac.jp
更新日:1999年2月28日