岩松 暉著『二度わらし』32


兼職教授

 大学審議会の答申が出された。第三者評価機関の設置など大学にとって厳しい内容が盛り込まれている。大学間格差をますます助長する、財界の要請に沿った研究にだけ研究費が回されるなど、さまざまな批判が出されている。
 しかし、否定面ばかりではない。使いようによっては活性化につながる可能性のあるものもある。その中に兼職の規制緩和がある。現在の大学における地質学は、地球惑星科学のほうにシフトし、実社会で使われている地質学との乖離が極に達している感がある。旧制大学のうち最後まで残っていた東大地質が来年には地球惑星に改組されるという。旧制大学は大学教員の主たる供給源である。したがって、フィールドサイエンスを教えることの出来る教員がいなくなりつつある。もはや大学人自身による立ち直りは不可能に近い。上述の乖離を縮めるには、大学に新しい血を入れるしか解決のしようがないであろう。兼職教授として民間会社や官庁で活躍している優秀な人たちが大学に入ってきて欲しいと思う。

(1998.12.19 稿)


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更新日:1998年11月23日