岩松 暉著『二度わらし』4


入学率

 入試関係の会議があった。学生部長の話によれば、今年の入学率(入学者数/志願者数)は全国平均64%で、2000年には75%になるという。ほぼ全入である。それが偏差値で輪切りされ、有名大学から順に採っていくのが現実だから、地方大学は平均点以下の学力しかない者が集まる次第となる。理学部学生でも、微積分はおろか、対数や三角関数まで知らない者がいる始末。工学部では、補習授業で高校数学や物理の復習をやっているとか。実学系の卒業生は業界から一定のレベルを要求される。笑顔を売るセールスマンならともかく、技術屋は専門知識がなければ勤まらないからである。4年間でこのギャップを埋めるのは至難の技に近い。バブルの頃のように工学部を出ても金融業など別の分野に行ってくれるとよいのだが、などとぼやく先生がいた。ついこの間まで、専門を生かす職場に就職しないのはけしからんと怒っていた先生がである。

(1998.5.27 稿)


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更新日:1998年5月30日