岩松 暉著『二度わらし』3


単位

 また共通教育の話である。あまりに人数が多いので、数を減らす工夫をした同僚がいる。別に難解な話をしたわけではない。「出席はとらない。試験はしない。代わりにこれこれこういう題のレポートを学期末に提出すればよい。」と、講義初日の冒頭言ったそうである。題をメモしたら、ぞろぞろ半数は退室したとのこと。効果抜群でる。もっとも彼は翌週から来なくなると思っていたらしい。黒板に向かって字を書いている隙に、見つからないようにソーッと2・3人抜け出すならともかく、堂々と出ていったのには、さすがにむっとしたとぼやいていた。後日談がある。次の週には早速レポートを提出にきた学生がいる。彼は講義を一学期間聴いた上で、その知識をもとに図書館で実例を調べてレポートを書くことを期待していた。しかし、学生のほうは出しさえすれば単位をくれると約束したと受け取ったのだ。要するに、授業とは、自分の実力をつけるために聴くものではなく、単位を取るために出なければならない必要悪なのである。

(1998.5.18 稿)


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更新日:1998年5月20日