[地質調査こぼれ話 その17]

雨男考


 「今日は大変良いお天気です。みなさんがいつも良い子だからでしょう。」運動会の開会式における校長挨拶の決まり文句である。日頃の精進が天気を左右するとは誰も本気で信じていないが,フィールドワークはお天気商売だから,天気に関するジンクスを言う人が多い。
 私が学生の頃,東大では「さんずいへん」の付く人は雨男だと言われていた。駒場の地学実験で神奈川県の上野原に行った時,二手に分れて調査したら,片山信夫先生(現名誉教授)の組は雨に降られなかったのに,浜田隆士さんの組はずぶ濡れになって帰ってきた。本郷の理学部では,故渡辺武男先生と巡検に行ったら露頭が流れて失われていたというまことしやかな話が伝わっている。
 かくいう私も鹿大では雨男と言われ,私が巡検の当番に当たると,黒板に「雨具必携」などと落書される。巡検で富山に行った時は雨にたたられ,渡辺伝説と同様,川が増水して露頭が水没していた。屋久島の卒論指導では,台風が襲来し,1週間船止めにあった。丹後の大江山では初雪に見舞われた。etc.例証を挙げて非難される。「嵐を呼ぶ男」に昇格させてやるだの,いや「雪男」だのと,かしましい。
 これに対する私の反論は次の通りである。どうであろうか。第一に,フィールドに出かける日数が他の人たちに比べて圧倒的に多い。したがって,雨の日に当たる確率も大きくなる。第二に,私がいないとさびしいさびしいと泣いてくれる愛妻がいる。金色夜叉ではないが,その涙で雨が降るのだ。そんな可愛い恋人もいないお前たちは哀れなもんだ。どうだ,まいったか。
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更新日:1997年8月19日