山古志村を訪ねて―新潟県中越地震(第2報)―

専務理事 岩松 暉(GUPI Newsletter No.16, p.5, 2005)


 昨年暮れの18・19日、初雪の直前、大矢会長と新潟県中越地震の視察に行ってきましたのでご報告します。

 山古志村の村境には警察や消防団が厳重な警戒線を張っていて立ち入り禁止になっていました。空き巣狙い予防のためだとのことです。他人の不幸につけ込むとは何ということでしょうか。
 道路は寸断されていますから、北側から少し入っただけですが、第一印象は無惨の一語に尽きます。錦鯉と闘牛で有名だったのどかな棚田の村はどこへ行ったのでしょう。全山土砂崩れの惨状、父祖以来何代にもわたって営々と築いてきた棚田は見る影もありません。天然ダム(塞き止め湖)もできていました。鯉を飼っていた溜池は亀裂が入って涸れています。集落に入ると、家は壊れ、遙か谷底まで滑り落ちているものもあります。ここは有数の豪雪地帯、半壊でも恐らく雪の重みに耐えられないでしょう。火の気のない家屋には雪は尚更たくさん積もります。暗澹たる気持ちになりました。谷底にブルーシートをかけられた塊が点在していました。牛の死体とのことです。
 全域を調査したわけではありませんので断定的なことは言えませんが、この地域の土砂災害は主として泥岩や泥岩優勢砂岩泥岩互層分布域で発生しており、次の3つに大別されると思いました。
① 緩傾斜流れ盤の地すべり
 泥岩層の上面をすべり面として発生しており、一番大規模です。中には尾根までずらしているのもあるとか。地すべりなどマスムーブメントは造地形運動の一つですが、地形形成における地震の意義を改めて考えさせられました。もしかすると豪雨や融雪のような水文条件よりももっと大きな役割を果たしているのかも知れません。
② 急傾斜受け盤の崩落
 ケスタの受け盤側急斜面あるいは水平層の崖で発生する表層滑落や砂岩の節理に起因する転倒崩壊が主なものです。発生数は圧倒的に多いのですが、いずれも小規模です。
③ 道路や棚田の盛土部の崩壊
 盛土が地震に弱いのは当然ですが、養鯉池が無数にあることも土壌含水比を高めていたでしょうから、マイナスに働いたかも知れません。恐らく液状化も起きたのではないでしょうか。
 最後にご案内いただいた応用地質(株)小野寺新潟支店長に感謝します。ありがとうございました。


倒壊家屋(池谷)


道路被害(池谷)


道路地すべりと塞き止め湖(寺野)


表層崩壊(寺野)


滑落崖(寺野)


ページ先頭|退官後雑文もくじ
連絡先:iwamatsu@sci.kagoshima-u.ac.jp
更新日:2005年1月20日