岩松 暉著『地質屋のひとりごと』

童話 6


もうねんね

(1)

 かおるちゃんは さっきから ブロックに むちゅうです。
しかくい えんとつを つくっています。
サンタさんが はいってくるかしら。

(2)

 あたりは もう まっくらです。さど(佐渡)も みえません。
ベランダで かぜが ヒューン,ヒュルルーンと なっています。
おかあさんは がっこうです。
よるの がっこうの せんせいなのです。

(3)

 きゅうに さみしく なりました。
「おとうちゃーん,ごほん よんでぇ。」
かおるちゃんは しょさいに おとうさんを さがしに ゆきました。
「どれどれ,また おなじ ほんかい。」
かおるちゃんは おとうさんの おおきな あぐらのなかに すっぽり はいりました。
とても あたたかで,これなら おばけの はなしでも あんしんです。

(4)

 『あーん,あん。おかあさんが いないよ。あーん,あん』
「なんだか かおるちゃん みたいだね。」
「ちがうもん,かおちゃんは ほいくえんで なかないもん。」
「きょうは ちゃんと おひるねしたかい。」
「ううん,かたぎりせんせい,メッていったよ。」
「しょうがないな。じゃ,もう ねんねしようね。」

(5)

 おとうさんが ふとんを しいてくれました。
かおるちゃんは 『もうねんね』の ほんを もってきます。
おかあさんと いっしょに ねるときは,いつも この えほんを よんでもらいます。
『わんわんも ねんね,にゃんにゃんも ねんね』
ふとんは ほかほか いいきもち。
おとうさんの こえか,おかあさんの こえか はっきり しなくなります。
おやすみなさーい。

(1986.9.18 米良の里にて 稿)


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更新日:1997年8月19日