岩松地名考

岩松サミット

　「岩に松」は日本画の題材として古くから好まれてきた。地名や人名としてもっともありふれたものだと思われるかも知れないが、意外や意外、ほとんど見あたらない。私が東京にいた頃には、あの分厚い電話帳で探しても20人ほどしかいなかったし、新潟市ではわが家だけだった。鹿児島には結構いて岩松宝石店などもある(ただし、貧乏人の私には縁がない)。全国で岩松さんはいったい何人ぐらいいるのだろうか。みんな遠い親戚なのだろうか。「岩松サミット」を開催してみたいものである。もしもこのページをご覧になった岩松さんがおられたら、ぜひメールをいただきたい。
　鹿児島の鰻池の湖畔に鰻という集落があり、全員鰻さんとのこと。このように地名と同じ名字の人はたくさんいる。そこで、岩松という地名を調べてみた。ここには岩松さんがおられるのだろうか。

群馬県尾島町(わが家のルーツ)

　岩松氏は新田氏の有力庶子家で、鎌倉時代上野国岩松郷に館を構えていた。群馬県尾島町岩松の三菱電機群馬工場内には「新田岩松氏館跡」の碑がある(写真)。建武中興に際して同じ親戚の足利軍の麾下で戦ったが、室町幕府になってから新田一族として足利に追われたため、越後新田党を頼って越後に落ちのびたと言われている。この話の真偽のほどはわからないが、わが家の菩提寺である新潟県栃尾市の東光寺には藤原期の古い仏像があって文化財に指定されているのは事実だ。なお、群馬県岩松のすぐ近くにも東光寺という同名のお寺がある。
　そうなると、ここ群馬県尾島町岩松がわが家のルーツということになる。岩松山青蓮寺や岩松八幡宮などゆかりの社寺がある。

愛媛県津島町

　愛媛県津島町は宇和島の近くにある。合併して今の名称になったが、以前は岩松町だった。5万分の1地形図は今でも岩松図幅のままである(2万5千分の1は伊予岩松)。岩松川の河口にあり、天然の良港という。中世には岩松氏の所領だった。建武中興の時、後醍醐天皇を隠岐ノ島から密かに救出したのは岩松という海賊だが、やはり岩松氏の支族だというから、恐らくここが本拠地だったのだろう。もちろん、岩松小学校もある(写真)。

長崎県大村市

　長崎県大村市にJRの駅で唯一の岩松駅がある(写真：現在は瀟洒なものに立て替えられた)。岩松党の一部が九州に渡り、菊池勢と共に南朝方として戦ったというから、ここはそのゆかりの地なのだろう。

　なお、ここは地質学的には岩松安山岩類のtype localityとしても有名?である。径5mm程度のオパールが点在しているのが特徴(左偏光顕微鏡写真参照)。ただし、岩松安山岩類は変朽安山岩なのが難点で、長崎大学工学部の後藤恵之輔先生は、「変わっていて朽ちているとは、岩松先生にピッタリの名前だ」といたく気に入られた様子、松本征夫先生も変な石に命名してくれたものだ。

静岡県富士市

　静岡県富士市は富士町と岩松村・田子浦村が合併してできた。しかし、この岩松村は旧岩本村と旧松岡村が合併した際に１字ずつ取って名付けた地名だというから、岩松氏とは何の関係もない。
　岩松は東名高速道路沿いにある。富士川の治水で有名な雁堤(かりがねづつみ)のすぐ近くである。ここには富士川断層という活断層がはしっているとして有名である。当時の岩松村の中心地だったのだろうか、岩松小学校・岩松中学校・岩松公民館(写真)・岩松郵便局など、岩松と名の付く公共建物がたくさんある。このページのタイトルのマークは岩松小学校の徽章である。

連絡先：iwamatsu@sci.kagoshima-u.ac.jp

更新日：2010年6月9日

岩松地名考

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群馬県尾島町(わが家のルーツ)

愛媛県津島町

長崎県大村市

静岡県富士市

佐賀県小城町

北海道十勝支庁新得町

岩松峠

付―岩風呂の岩松