岩松 暉著『山のぬくもり』37


ヘールボッブ彗星

 今世紀最大の彗星と言われるヘールボッブ彗星が接近してきた。わが家の2階からもよく見えた。前回見たのはハレー彗星だが、あれよりはるかに見事である。彗星というと亡き父を思い出す。長生きしてハレー彗星を生涯に2度見ることができた。孫達も自分と同じようにハレーを2度見ることのできる世代なのだから、是非見せろと言っていた。それでハレー彗星観察会に子ども達を連れていったことがある。数年前の流星群の時には、もう大きくなっていた子ども達と、高台の広場に寝袋を敷いて、一緒に寝ころんで夜を明かした。流れ星が消えないうちに願い事をすると言って、子ども達は童心に帰って騒いでいた。私には別の感慨があった。引き揚げ直後母が亡くなった頃、父は異国の空で流れ星を見て、不吉な予感がしたと話をしてくれたことがある。子ども達の笑い声をよそに、そんなとりとめもないことを思い出しながら、亡き父母をしのんでいたのである。幸い子ども達は平和な世の中に生まれ、両親の庇護のもとにすくすくと育った。平和な世の中が続くことを願う。

(1997.3.30 稿)


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更新日:1997年8月19日