岩松 暉著『山のぬくもり』31


前代未聞の追い出しコンパ

 追い出しコンパと言えば、昨年の追い出しコンパも前代未聞だった。飲み屋の廊下で行列が出来ている。会費の徴収で手間取っているらしい。コンパの幹事長がそうした雑用をやっているから、会を取り仕切る人がいない。部屋の中では先に来た人たちがしびれを切らせて、三々五々飲み始めてしまった。例年なら、卒業生のスピーチがあり、それぞれの進路が紹介された。先生や在校生のはなむけの言葉があり、そうだ、あんなエピソードがあったっけなどと思い出したりして和やかになる。ところが、幹事長は片隅で「イッキ、イッキ」とはやし立て、数人でバカ騒ぎしている。全体に対する気配りなど全くない。そのうちに食い物も飲み物もなくなって、これまた三々五々流れ解散となった。結局、一切のスピーチも余興もなかった。「コンパ係長」の項でも述べたが、こんな人間が世の中に出ても役立つ人間にはならないだろう。困ったものだ。
 一昨年も飲み屋の廊下で行列が出来た。消費税をプラスして4,120円とはしたを付けたので、お釣りで手間取ったのだ。実質会費はたったの4,000円だから、酒がすぐ無くなってしまう。主任教授が「酒を追加しろ」と幹事に言った。ところがいつまでも持ってこない。「この店は一体どうなっているんだ。これから麹を仕込むのか」と怒鳴ったところ、実は片隅で幹事が一人当たりいくらになるか割り算をしていて、まだ注文していなかったのだ。主任教授が言ったのだから、「ご馳走様」と言えばそれで済むものを。やれやれ、今の学生はたかり方も知らない。

(1997.2.23 稿)


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更新日:1997年8月19日