岩松 暉著『山のぬくもり』21


精神年齢

 大学構内に銀行の自動支払機がある。先日のこと、私と並んで操作していた学生が突然「ちくしょう!」と言って、機械を2・3度激しく蹴った。薄く印字された通帳は受け付けないことがある。そのためらしい。「君、何をするの」ととがめたところ、「何をこのクソじじい」と言う。大学構内だから私くらいの年輩者は教職員に決まっている。さすがに周辺にいた学生まで唖然とした。彼も周囲の冷たい視線を感じてか、そそくさと立ち去った。昔、真空管時代のラジオはポンとたたくと鳴り出すことがあったが、今の若者はそんな経験はないので、蹴ったら動くと思ったのではあるまい。要するに腹いせをしたのだ。
 最近の学生の中には、自分で自分の感情をコントロール出来ない者がいる。すぐカーッとなる。幼いのである。かつてマッカーサーは日本人の精神年齢は12歳だと言ったとか。東大幼稚園なる言葉がマスコミで流行ったこともある。してみるとその程度の精神年齢なのだろう。ゼミなどであまりひどい発表をするから注意すると、見る見る額に青筋が立ってくる。反省するのではなく、侮辱されたと思うらしい。幼いときからいい子いい子とおだてられ甘やかされて育ったため、叱られた経験がないのかも知れない。卒業して会社の人間関係の中でうまくやっていけるか心配である。何とか溶け込んで長続きしてくれるといいが。

(1997.1.19 稿)


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更新日:1997年8月19日