岩松 暉著『山のぬくもり』12


ConservationとProtection

 最近は自然保護の声が高い。大変結構なことである。しかし、捕鯨反対のように感情的なものや、自然を神聖視し1木1草たりと採ってはいけないというようなヒステリックなものはいただけない。どうも自然とのつき合い方を知らない都会人に多いようである。私のような田舎育ちは自然の中に溶け込んで暮らしてきたから、木の実は採って食べたし、木の枝で焚き火もした。野焼きをすれば、草がよく生え、ワラビもよく出た。自然に絶対に手を着けるななどという田舎人はいないのである。
 それで思い出した。一昔前、屋久島の自然保護調査を環境庁から頼まれ、自然保護協会の人たちと一緒にやったことがある。会長の沼田眞先生と飲んだ。話が自然保護のあり方に及んだ。沼田先生は、「自然保護協会の英訳名はNature Conservation Society of Japan, NACS-Jで、決してProtectionではありません。元金には手を着けてはいけないが、利息はいただいてよいのです。人類は自然を利用して生きてきたのですから。」とおっしゃった。その話に共鳴して、自然保護協会の会員になり、現在に至っている。

(1997.1.5 稿)


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更新日:1997年8月19日