岩松 暉著『山のぬくもり』9


女性の就職超氷河期

 就職氷河期だという。とくに女子学生にとっては超氷河期である。男子学生よりずっと優秀でも採ってくれない。女性は結婚退職が多く、せいぜい3年しか勤めてくれないからという。しかし、過保護でちゃやほや育てられた甘ったれのぼんぼんは、自己中心的で人の和を図ることができないし、叱られたことがないから上司にちょっときつく言われるとかっとなって半年も経たたないのに飛び出す者もいる。動物学的に男であると言って長く勤める保障はないのだが。
 結婚するのは当然のことであり、みんながみんなシングルを決め込み、転勤OK、残業OKでは日本は滅びてしまう。アメリカではウーマンリブから離婚の激増、シングルの時代を経て、今家族が見直されている(1990年代は国際家族年)。シングルでも性欲はあるから、結局、フリーセックス→エイズ禍となってしまったからである。青少年非行の問題も大きい。わが国は前車の轍を踏んではならない。企業も子育てをしながら勤めを続けられる条件を整備して欲しい。しかし、企業努力だけでは済まない問題もある。東京のように通勤に2時間もかかるようだと、いくら残業ゼロで5時に退社しても、家へ帰ってそれから食事の支度では、子供はお腹が空いてしまう。職住接近など社会的施策も求められる。
 もちろん、企業の言い分も分かる。地質調査業の場合、一人で山へ調査に出ることも多い。熊より恐ろしいのは人間の男性である。万一、暴行事件などに巻き込まれたら、取り返しがつかない。金銭で解決できる問題ではないからである。また、現場では下請けを使うことが多い。車座になって酒を酌み交わし、気心が知れた仲になって初めて、急斜面でのボーリングなど危険な作業でもやってくれるようになる。女性ではそれができないという。そう言われると絶句する。もっと近代的な労働環境を作ってくれと言うしかない。
 しかし、これからは女性の大学進学率も向上するし、社会進出も必然である。女性の持てる力を発揮する場がないのは社会的損失である。とくに土木建設の分野では乱開発の時代は終わった。これからは環境に配慮した住民にも優しい地域アメニティーを創っていくことが求められる。女性の細やかなセンスが必要とされる時代になる。女性の雇用環境を抜本的に改善し、社会進出の条件整備をして欲しいと願う。

(1997.1.2 稿)


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更新日:1997年8月19日