岩松 暉著『二度わらし』37


就職率

 平成不況は深刻である。文部省の調査によると、今年の大卒の就職率は全国平均で80.3%、九州は一番悪くて63.8%だという。わが鹿児島大学はさらに悪くて50.2%、中でももっとも低いのは私の勤めている理学部の男子で29.6%である(南日本新聞,1999.1.14)。つまり全国最低という訳である。こんな調査結果を報道されたのでは受験生が激減すると心配した上層部から、4年生のうち、卒業できそうもない者と、就職を希望しない者の人数を調べるようにと指示が来た。つまり、分母を小さくすれば就職率は見かけ上上昇するからである。何とも姑息だ。
 その結果、理学部では卒業予定者184名、就職希望者87名、うち就職内定者62名で、就職率71.3%となった。全学平均とほぼ同じ水準である。大学院進学希望者もいるが、定員が42名で全入に近いから、進学も就職も希望しない学生がかなりいることになる。さてこれは何を意味するのだろうか。どうも世の荒波の中に出たくない、出る自信がないという巣立ちの出来ないひよこ達らしい。
 なお、理学部男子の就職率は59.3%、女子は90.9%だった。世間の常識と違うかも知れないが、女性のほうが優秀だから当然であろう。幼少期から何も考えずにのほほんとしていると、男性はそのままエスカレーターに乗って大学まで来てしまう。それに比べて女性は、女に学問は要らないという親に逆らって、自ら進路を選択したケースが多く、多少自立している。したがって、男子学生に比べればガッツもある。幼児化現象の見られるのは、ほとんど男子学生である。男性の相対的地盤沈下が、この就職率の差となって表れたのであろう。

(1999.1.15 稿)


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更新日:1999年1月15日