岩松 暉著『二度わらし』35


禁煙席

 国内航空便が全便禁煙になった。大歓迎である。エアーカーテンなどで仕切っているならともかく、従来の禁煙席はまやかしだった。これで快適に過ごせる。隣でたばこを吸われると衣服にまで臭いが染み込んで、一日中不快である。
 不快だけではすまない。私の教え子で、学生時代コンパでは陽気に騒ぐ、大変元気で愉快な男がいた。ところが就職してからひどい喘息になった。勤務先の事務所がたばこの煙でむんむんしていたからだという。酒を飲むと発作が起きるそうで、今では一滴もやらず、まるで別人のようである。結局、配転を願い出て他の支店に転勤した。今度の支店は支店長が配慮してくれて禁煙になった。本人も水泳をやったり、いろいろな療法を試したりして努力しているが、小児喘息と違って、大人になってから罹った喘息は治りにくいらしい。
 このように他人の健康にまで悪影響を与えるのだから、愛煙家の人権云々をいうのは筋違いであろう。今度はレストランも是非禁煙にしていただきたい。折角の美味しい料理が台無しになる。後から入ってきた客がたばこを吸い始めたので、食事途中だったけれど金を払って出てきたこともある。とくに喫茶店は狭い店が多いから、煙がこもって最悪である。何とかしてもらいたい。

(1998.12.20 稿)


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更新日:1998年12月20日