岩松 暉著『二度わらし』28


福祉係

 今度から教員免許取得には介護経験が義務付けられるという。地方公務員をしている卒業生に、新人公務員も最初に福祉係に配属すれば住民の気持ちのわかる公務員になるのではないかと提案してみた。言下に否との回答が返ってきた。そんなことをすれば、「休まず、遅れず、働かず」単に5時まで机の前に座っているだけの典型的なお役人が出来てしまうという。理由を聞いてみた。
 本当に気の毒な生活保護世帯もいるが、中には怠け者で働かず、金が入るとタクシーでパチンコ屋に駆けつけ、毎日酒浸りの人、2箇所に住居を構え、車で通ってくる偽装離婚の母子世帯、子供の人権に配慮して学校納付金を銀行振込にすると酒代に化け、生活保護世帯ほど滞納が多いなどなど、ウラのウラまで見えるのが福祉係である。自分たちの月給よりもはるかに高額の手当をもらっているのを見聞きするとバカらしくなる。職安に行って仕事を探すようにとか、高い家賃を払うより寮に入居したらなどと言うと、規則正しい生活がイヤな人が多いので、福祉切り捨てと政治家に訴え、圧力をかけてくる。福祉施設入居も、政治家が介入して支持者を割り込ませ、本当に困っている人が後回しにされたりする。少しでも逆らうと、人民の敵呼ばわりされ、上司に抗議がくる。上司は政治家には絶対服従だから、こちらに理があっても叱責される。結局、正直者が馬鹿をみるので、真剣に職務に取り組む気がなくなってしまう。だから、新人を最初に福祉係に配属してはいけないのだとのことである。
 これに類するウラ話は民生委員の人からも聞いたことがある。恐らくかなり普遍的にあるのだろう。こうした政治家はまさに族議員、税金で票を買うという点では土木族と同じである。土木族は役人をちゃやほやするが、福祉族は居丈高で自分たちを攻撃する。ちゃやほやされていい気になるのも困ったものだが、こんなに一生懸命やっているのに人民の敵扱いされては嫌気がさすと言っていた。さてさて、こうした族議員の跋扈は何とかならないものだろうか。

(1998.11.15 稿)


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更新日:1998年11月15日