岩松 暉著『二度わらし』15


茶髪と弊衣破帽

 この頃は学内で普通に茶髪を見かける。少し前までは学外者と見て間違いなかった。今やあちこちにべたっと座りこむジベタリアンも多い。もっとも今の若者は地べたが地面のことを意味するとは知らないから、こんな名前を付けたのはマスコミのオジサン族なのだろう。
 ある心理学の大先生は、茶髪は自己を顕示したい幼児性の現れであるなどと解説しておられる。しかし、ご自分は旧制高校時代、弊衣破帽に足駄といったスタイルで街を闊歩されたのではないだろうか。自己顕示欲という点では同じであろう。ただ、旧制高校生は、「治安の夢に耽りたる榮華の巷低く見て、濁れる海に漂へるわが國民を救はん」といったエリート意識から出ているのに対し、現在はどちらかというと落ちこぼれ学生がやっているという点が違うのかもしれない。

(1998.7.5 稿)


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更新日:1998年7月5日