岩松 暉著『二度わらし』8


地球環境では食えない?

 入試シーズンも終わった。地球環境科学科になってから最初の入試である。推薦入学・前期入試・後期入試と3本立ての入試だから、みかけ上そこそこの倍率はある。しかし、全員私立大学や他国立大学と併願しているので、実質は1倍に近い。つまり実質全入時代に突入したのだ。なお、大学院のほうも前代未聞の3次募集までして、ついに定員が埋まらなかった。
 地球環境は流行語、学科改組には志願者が増えるだろうとの読みもあった。しかし、それは甘い。生徒自身が自分の好みで進学先を決めるならともかく、昨今は親、とくに母親が決めるのである。当然、就職など社会経済情勢が考慮される。今年は未曾有の不況、地球環境では温暖化ぐらいしかイメージできないから、就職口があるだろうかと不安に思うのはもっともである。昨年までは地学科の名称で学生を募集していた。その頃までは公共事業も潤沢にあったし、就職先にはあまり困らなかった。土木に比べて環境はまだ産業としての器がはるかに小さい。地学科時代に比べて、学生数も多くなったし、女子学生も急増した。はてさて、彼らが卒業する頃は就職先の世話が大変になるだろう。今から心配である。

(1998.3.21 稿)


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更新日:1998年6月6日