京大防災研六甲観測所|
鶴丸地すべり|
鹿児島県北西部地震|
砂防ランドあいら|
種子島地すべり|
国分上野原遺跡|
バイオマット巡検|
出水市針原川土石流災害|
宮崎層群学生野外指導|
東九州自動車道|
鹿児島県田代町土砂災害|
第二白糸トンネル岩盤崩落|
佐世保市原分町地すべり|
生月島地すべり|
出水活断層|
姶良カルデラ岩盤崩落|
九州初の免震ビル見学|
九州自動車道法面点検|
会議出張・その他
京大防災研六甲観測所
1997年1月下旬、京大防災研奥西教授主催の研究集会「災害危険個所の抽出のための地質学・地形学的手法」に出席したが、途中1日六甲巡検があった。神戸市鶴甲地区の表層崩壊を見学した後、ケーブルカーで六甲山に登り、しんしんと雪が降りしきるなか下山しながら京大が定点観測している西山谷地域を見せていただいた。最後に観測所を見学した。
鶴丸地すべり
霧島の麓にある地すべりである。3月、日本地下技術の三田部長さんにご案内いただいた。卒論指導を兼ねて講座全員で行って来たのである。加久藤層群の上に安山岩が載っているところで、安山岩直下からすべっている。地質時代は違うが、北松型と言える。地すべりにより、小さな堰き止め湖が出来ていた。
鹿児島県北西部地震
鹿児島は地震がないところと言われ、地震保険でも保険金が一番安い一等地である。ところが青天の霹靂、3月26日夕刻突然の強震に見舞われた。気象庁の決めた正式名称ではないが、
鹿児島県北西部地震と呼ばれている。この日は奇しくも私たち夫婦の結婚記念日だったので、普段よりも早めに帰宅して着替えをしていた時、安普請の2階、激しく揺れて、少々身の危険を感じた。幸い何事もなかったので、どうぞご安心を。
早速、突発災害の研究を開始すべく、自然災害総合研究班と相談したが、死者ゼロで被害が軽微だったという理由で、無理だろうという判断だった。結局、学長にお願いして教育研究学内特別経費を配分してもらうことになり、鹿大震災調査団を結成した。私が責任者である。今年度中に調査報告書と1:50,000震災地質図を刊行する予定である。震災1周年には現地宮之城町で普及講演会開催を企画している。
砂防ランドあいら
1993年鹿児島豪雨災害で姶良ニュータウンの崖が全面にわたって崩壊し、有名になった。ここは防災工事を兼ねて「砂防ランドあいら」として公園緑地化することになっている。1997年3月、工事の法面整形に際して、
入戸火砕流が基盤にぶち当たって乱流堆積をした構造が露出した。
早速写真に撮りインターネットに掲載して、火砕流の権威荒牧日大教授にお知らせのメールを出した。1週間後、荒牧さんは神戸大助手の鎌田さんと日大生を連れて現れた。私が学生の頃、荒牧さんは東大助手で、岩石学実験や進論の指導を受けたことがある。それ故、フィールド大好き人間だということはよく承知していたが、まさかすぐ飛んでこられるとは思わなかった。お幾つになっても研究熱心なのには敬服した次第である。
種子島地すべり
1997年5月、地すべり学会九州支部の巡検で、
南種子町茎永の地すべりを見学した。屋久島から見ると、種子島はとても地すべりなどあるとは思えないほど平べったい島である。しかし、中新世の茎永層群が分布しているところでは、いわゆる第三紀層地すべりが存在する。この場所は茎永層群大崎層の砂岩が分布しているが、泥岩の夾みの上面からすべった流れ盤すべりだった。
なお、茎永層群は岐阜の瑞浪層群に対比される地層で、ビカリアの化石(月のおさがり)が産出するので有名である。その頃の日本列島は多島海のような状態で、種子島から岐阜・富山まで暖流が流れ、マングローブが生えているほど暖かかったそうである。
国分上野原遺跡
国分市の
上野原遺跡は最古・最大級の縄文遺跡として全国的に有名になった。約9,500年前のものとのこと。連結土坑のような肉の薫製施設まであって、かなり豊かな生活をしていたらしい。日本の文化はまず温暖な南九州から始まり、だんだん北上していったのだろう。
ところで、遺跡を覆う土の中にはテフラだけでなく、黒土がたくさん存在する。山野井山形大教授によれば、わが国で黒ボク土と呼ばれ火山性土壌とされていた土の中には焼畑農業によってもたらされた微粒炭がかなり含まれているそうである。そこで、上野原遺跡で黒土を採集して山野井さんに分析してもらうことにした。ドングリを集めて暮らしているような生活なら、集落を形成するだけの多くの人口を養えないと考えたからである。農耕の始まりも南九州と言えたら愉快だなあと、山野井さんの分析結果を楽しみにしている次第である。
バイオマット巡検
鹿大地学科も本年4月から地球環境科学科(略称地環≠痴漢)になった。地球環境学科を名乗る大学はかなり出来たが、従来の地質学の範ちゅうから一歩も出ない学科が多い中で、真正面から環境地質学に取り組んでいるのは金沢大学の田崎和江教授くらいなものである。そこで7月、わが地球環境科学科のスタートに際して、田崎さんを集中講義にお招きした。精力的に興味深い講義をしていただいた上に、中日には学生のために温泉のバイオマットを見学する巡検を企画してくださった。温泉水が流れているところにある緑色のぬるぬるした藻類など、今まで見向きもしなかったのだが、先カンブリア時代に生命が出現した頃のアナロジーだと説明されると、何となく貴重に思えた。
出水市針原川土石流災害
今年は空梅雨かと言われ、南薩地方では水不足が社会問題化していた。池田湖の取水制限をめぐってゴタゴタしていたのである。ところが、今年の雨は皮肉にも地震被害のあった北薩地方に集中した。とうとう7月10日
出水市の針原川で土石流災害が起きてしまった。ここは肥薩火山岩類と呼ばれる風化した鮮新~更新世の安山岩が分布しているところである。
この日、私は熊本県の地質調査業協会の招きで「技術士をめさす会」の発会式で講演をすることになり、熊本に出張していて留守だった。JRも高速道路も不通になったため、翌日は熊本大学で遊んでいた。マスコミや自然災害総合研究班から鹿大の研究室へじゃんじゃん電話があったそうだが、おかげで難を免れた。結局、鹿大農学部の下川教授がそのとばっちりを受けて、突発災害の研究班を組織することになった。もちろん、私も分担者で協力している。
宮崎層群学生野外指導
地学科では3年の夏休みに特別研究Aという地質調査の野外実習がある。他大学の進論に当たる。今年の1年生から地球環境科学科だから、特別研究Aが必修として課されるのは旧課程の学生だけである。つまり、今年と来年の2回でおしまいという訳なので、例年は若手教員の担当だが、最後だから全員で担当しようということになった。私は今年の担当になり、宮崎県綾町に1週間行って来た。写真は宮崎層群が日向層群に不整合に載っているところである。
学生たちがフィールドに入り10日間ほど経った頃を見計らって行ったのだが、誰一人としてマップらしきものを作っている人はいなかった。誰でも目につく大きな露頭、つまり犬が歩いて棒に当たったところを、パラパラと色を塗ってあるだけで、地質構造のイメージもつかんでいない。当然、柱状図も断面図も一切ない。結局、夏草をかき分けて徹底的に露頭を探し、ルートマップを作るところから始めた。この段階は2年生後期の実習で済んでいるはずなのだが。
久しぶりで地下足袋を履きジャブジャブと沢歩きをした。夏の暑い時だからこちらは至って爽快だったが、学生たちはこりごりしたかも知れない。
東九州自動車道上野原トンネル落石検討委員会
東九州自動車道が現在の隼人道路から末吉まで延長される。国分インターから縄文遺跡で有名な上野原台地にトンネルで突っ込むことになった。問題は、その坑口に剣岩というロッククライミングの名所が立ちはだかっていることである。柱状節理の発達した安山岩の岩壁で、オーバーハングしたところもある。北海道の豊浜トンネル事故の例もあり、奥園九産大教授を委員長とする落石検討委員会が設けられた。私も委員を頼まれた。大事をとり、切り取る方向で検討することになった。
鹿児島県田代町土砂災害
今年は地震・土石流と災害が続き、もうたくさんと思っていた矢先、
台風19号が鹿児島県を直撃、徳之島で風にあおられて1人死亡したのを皮切りに、土砂崩れ・高潮・洪水と、いろいろな災害が続発した。中でも9月16日、
田代町で土砂災害があり、3人の犠牲者が出た。田代火砕流堆積物からなる斜面である。火砕流堆積物の非溶結部をシラスと定義するなら、ここもシラスだが、鹿児島市周辺と違って、20度前後の大変緩い斜面なのが特徴である。地質時代の古い火砕流だからだろうか。切り立ったシラス崖と違って、こんな緩斜面で崩壊が起きるというのも意外だったが、もう一つ不思議なのは、現場が地形地質から見て崩壊跡地だったことである。崩壊輪廻説から言えば他の場所が崩れてもよさそうなのに、どうしてここが再度崩れたのかよくわからない。
第二白糸トンネル岩盤崩落
大阪での自然災害学会から引き続いて札幌で応用地質学会があった。1日だけ鹿児島に帰るのも不経済だから、直接札幌に飛び、学会の前日10月20日に第二白糸トンネルの岩盤崩落現場を見学に行った。マスコミで有名になった豊浜トンネル崩落の何倍も大きなものだそうである。水中火砕岩が崩れたのだが、こうした水中火砕岩は渡島半島に広く分布し、奇岩絶景を作っている。長大トンネルで直接抜けばと言ったら、観光道路も兼ねるため、時々海岸部に顔を出さなければならないとの答えだった。
佐世保市原分町地すべり
長崎県地質調査業協会技術講習会の講師で出かけた翌日の10月31日、藤永地建永濱さんのご好意で、県内の地すべりを見学させていただいた。ここ原分町は、今年の梅雨に動き出して有名になったところである。事前の徴候があったため、避難して犠牲者は出なかったという。幅40m長さ60mの小規模なものだが、住宅地だったため大きく報道された。
生月島地すべり
典型的な北松地すべりで、頁岩がすべり面になっている流れ盤地すべりである。海岸線から約700mの位置に落差35mの滑落崖があるが、地すべり自体は傾斜2度という極めて緩いのが特徴である。
出水活断層
文化の日の休日だというのに、鹿児島県主要活断層調査検討委員会の現地調査が行われた。私が委員長である。出水では横ずれ断層地形を見学した後、断層露頭などを観察した。新しく動いた証拠となる露頭も見せてもらったが、今ひとつ確実性に乏しいように見えた。翌日は、鹿児島県北西部地震のあった鶴田地区の段丘を巡検した。
姶良カルデラ岩盤崩落
建設省大隅工事事務所の依頼で、姶良カルデラ壁(垂水市側)の岩盤崩落危険個所を見て回った。流紋岩の切り立った崖に亀裂が入っていたり、オーバーハングした部分があったりと、かなり危険なところも見られた。最終的には国道を桜島側に付け替えて迂回する計画だそうである。
九州初の免震ビル見学
(株)建設技術研究所福岡支社の新社屋シーティーアイ福岡ビルは、活断層の警固断層直上に建っている。そこで、九州で初めての免震構造を採用されたとのこと。福岡出張のついでに見学させていただいた。免震構造だけでなく、雨水の雑用水としての利用など、いろいろ新工夫が凝らされていて感心した。
九州自動車道法面点検
ここ数年、日本道路公団に頼まれて九州支社管内高速道路の法面点検をお手伝いしている。今年はクリスマスに行ったが、シラスがけが対象だった。今建設中の南九州西回り自動車道鹿児島道路も見学した。写真は建設中の松元インターである。
会議・講義・講演・その他
- 1月 京都大学防災研究所研究集会(宇治)…講演
- 2月 文部省自然災害総合研究班研究連絡委員会(名古屋)
- 2月 自然災害総合研究班西部地区部会(福岡)…講演
- 2月 日本応用地質学会九州支部幹事会(福岡)
- 2月 恒石さん(東大地震研)退官祝賀会(東京)
- 3月 東京大学大学院工学系研究科学位審査会(東京)
- 4月 産業地質科学研究所評議員会(新潟)
- 4月 日本応用地質学会九州支部幹事会(福岡)
- 5月 鹿児島県主要活断層調査検討委員会(鹿児島)
- 5月 日本応用地質学会九州支部総会(福岡)
- 5月 地すべり学会九州支部総会(屋久島)…講演
- 6月 日本情報地質学会評議員会(東京)
- 6月 日本応用地質学会九州支部幹事会(福岡)
- 6月 高橋元九大学長葬儀(福岡)
- 6月 日本情報地質学会総会(東京)
- 7月 熊本県地盤工学グループ発会式(熊本)…講演
- 7月 卒業生結婚式(福岡)
- 7月 日本応用地質学会理事会(東京)
- 7月 日本地質学会地質基準委員会(東京)
- 8月 日本情報地質学会評議員会(東京)
- 8月 IUGS/IUFRO研究集会(鹿児島)…講演
- 8月 JH東九州自動車道委員会(国分)
- 8月 徳山兵庫教育大名誉教授退官祝賀会(大阪)
- 8月 日本応用地質学会九州支部講習会(福岡)
- 9月 故片山東大名誉教授追悼会(東京)
- 9月 鹿児島県主要活断層調査検討委員会(鹿児島)
- 9月 日本応用地質学会九州支部幹事会(福岡)
- 10月 伊東日本地研会長叙勲祝賀会(福岡)
- 10月 日本地質学会学術大会(福岡)…講演
- 10月 自然災害科学シンポジウム(吹田)
- 10月 日本自然災害学会総会(吹田)…講演
- 10月 日本応用地質学会研究発表会(札幌)
- 10月 IUGS/IUFRO崩壊誘起土石流研究集会(鹿児島)…講演
- 10月 自然災害総合研究班西部地区部会(鹿児島・出水)…講演
- 10月 長崎県地質調査業協会技術講習会(諫早)…講演
- 11月 日本応用地質学会九州支部研究発表会(福岡)
- 11月 鹿児島県主要活断層調査検討委員会(出水・鹿児島)
- 11月 日本地質学会地質基準委員会(東京)
- 11月 日本応用地質学会九州支部幹事会(福岡)
- 11月 火山工学セミナーin鹿児島'97(鹿児島)…講演
- 11月 鹿児島県建設技術講演会(鹿児島)…講演
- 12月 日本学術会議地質学研究連絡委員会(東京)
- 12月 日本地質学会環境地質シンポジウム(東京)
- 12月 日本応用地質学会理事会(東京)
- 12月 秋田大学集中講義(秋田)…講義
- 12月 日本地質学会地質基準委員会(東京)
- 12月 日本応用地質学会九州支部合同役員会(福岡)
- 12月 JH法面検討委員会(加治木)
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連絡先:iwamatsu@sci.kagoshima-u.ac.jp
更新日:1998年4月8日