フンちゃん東奔西走(2000)


SPCウオール工法試験|宇土半島|地質標本館|土木研究所|本所被服廠跡|日南|輝北ダム|神田川大洗堰跡|眉山|宇土半島2|新幹線薩摩田上トンネル|鹿屋道路陥没事故|鹿屋道路陥没事故2|宇土半島3|岩手一戸トンネル|浪打峠の交叉層|出雲大社|上野原トンネル|清水の湧水|シラスドリーネ|川辺ダム|十津川|鎌原火砕流|道路防災ドクター|豪露天掘炭坑|出水活断層|会議出張・その他

★SPCウオール工法試験

 人吉でSPC(Slope Precast Concrete)ウオール工法の公開実験があった。クッション材として砂・エアーミルク・発泡スチロールを使った3種類の落石覆土工を構築し、その上から3トンの重錘を落下させて行う大規模な実験である。それぞれ10m、20mの高さから落下させたが、いずれも破損せず、有用性が証明された。(1/30)

★宇土半島

 卒論指導で宇土半島に行って来た。火山岩地帯である。斜面を這い回って露頭を探した。久しぶりに良い汗を流し爽快だった。あちこちに火山岩頸が点在し、別府―島原地溝の南縁を限る弱線の存在を思わせた。写真は火山岩頸の砕石場。(3/4)

★地質標本館

 地質調査所で講演を頼まれてつくばに行って来た。翌日、地質標本館を見学させていただいた。他の博物館と違うところは、業者から買ってきた標本ではなく、所員が自分で採集してきたものだという。研究材料だったのである。単にきれいとか珍しいとかいうのではなく、学問に裏打ちされた重みを感じた。(3/9)

★土木研究所

 地質学会総会が筑波大であった。当日では講演に間に合わないので、前日出かけた。少し時間があったので、建設省土木研究所にお邪魔して見学させていただいた。大規模な力学試験器や巨大なダム模型など、すべてにおいて規模が大きい。科技庁防災科研でも感じたことだが、国研は機器だけたくさんあって、マンパワーが足りないとの印象を受けた。(3/20)

★本所被服廠跡

 地質学会終了後では飛行機の最終便に間に合わない。つくばに泊まってもよかったが、翌日は春分の日、ゆっくり東京見物と思って東京まで出てきた。しかし、やはり貧乏性、専門に関係あるところへ行くことにした。まず両国の横網町公園を訪れた。ここは本所被服廠跡、関東大震災で38,000人が焼死したところである。東京都の慰霊堂と復興記念館がある。震災と戦災の両方の犠牲者を祀ってある。屋外に地震火災で焼けこげたいろいろな品物が展示してあった。写真はモーターである。火災のすさまじさが偲ばれる。その後、江戸東京博物館へも行ってきた。(3/20)

★日南

 卒論指導で日南に行って来た。もともとここは観光地だが、桜が咲き鴬が鳴いて今が絶好の季節である。天候にも恵まれ、フィールドを満喫した。写真は宮崎層群基底の不整合である。
 帰りに飫肥城と小村寿太郎記念館に立ち寄ってきた。(4/9)

★輝北ダム

 輝北ダムで岩盤検査があった。卒業生から一番見頃だとの連絡を受けたので、講座の学生を連れて見学に行った。四万十層群の教科書的なメランジュが見事だった。学生たちも感激していた。まさに百聞は一見に如かず。本当はこのような実験実習の機会を増やしたいのだが、複合学科になり学生数が多くなったため、逆に黒板での講義が多くなってしまった。(5/2)

★神田川大洗堰跡

 東京地学協会の評議員会があり、地下鉄有楽町線に乗った。少し時間があったので、そのまま乗り越し江戸川橋まで行って来た。学生時代この近くに下宿していたことがある懐かしいところだ。江戸時代ここに大洗堰を設けて水位を上げ、神田川の水を上水路に導いたところである。江戸川公園内に堰が復元されていた。松尾芭蕉もこの上水工事に従事していたという。水道工事技術者だったのだろうか。何となく親近感をおぼえる。近くに芭蕉庵がある。(5/23)

★眉山

 徳島でHazard2000という国際会議があった。東京から直行したので、半日観光する時間が取れた。眉山公園に登ってきた。昔、学生巡検で来たことがある。藍晶石の大きな結晶が採れることで世界的に有名だとかで、ドイツの標本会社がここから採集していったものだと説明を受けたことを覚えている。しかし、今ではすっかり公園化され、ほとんど露頭が見られなかった。
 帰りに徳島城公園に立ち寄り、庭園を見学した。結晶片岩の本場だから、ふんだんに結晶片岩が使ってある。見事な微褶曲の発達した庭石を写真に撮ってきた。お庭を見て岩石が気になるなど、プロ意識が習い性となり困ったものだと、独り苦笑した。(5/23)

★宇土半島2

 卒論指導でまた宇土半島まで出かけた。コアを見せていただく機会があったので、コア観察の実習に行ったのである。ついでに有名な赤瀬の不整合を見学した。元はもっと大きな立派な露頭だったが、家が建ったり人工改変が進んでいた。それでも白亜紀層の上に古第三系が傾斜不整合に載ることは観察できる。(6/8)

★新幹線薩摩田上トンネル

 九州新幹線鹿児島ルートの建設も本格化し、ついに西鹿児島まで工事が及んできた。西鹿児島駅の真裏で薩摩田上トンネルを掘削中である。応用地質学の授業の一環として見学に行ってきた。学生たちにとっては工事現場の見学は初めてである。日頃の講義ではほとんど質問しないのに、今回は質問がたくさん出た。それだけ印象深かったのだろう。(7/8)

★鹿屋道路陥没事故

 6月初旬の豪雨の際、鹿屋市の市道で道路が陥没し、運悪くたまたま通りかかった自動車が落ちて一人亡くなった。鹿屋は戦前特効基地のあったところ、地下壕や防空壕が市内に800箇所もあるという。今回の陥没のメカニズムと地下壕調査法を究明する委員会が出来て、現地を訪れた。空洞は道路舗装材を含む土砂で完全に閉塞されていた(写真)。(7/8)

★鹿屋道路陥没事故2

 上記陥没事故調査の一環として、旧帝国海軍の地下壕を調査した(写真)。背丈の2倍ほどある大きな壕が格子状に掘られていた。なお、ちょうど事故現場では高密度電探も行われており、空洞が鮮明に認められていた。 (8/10)

★宇土半島3

 三度目の卒論指導。今までの地学科時代にはこんなにしばしば現地指導に行ったことはない。今回は火山が専門の井村助教授にも同行願った。凝灰角礫岩と称してきたものが火砕流堆積物なのかラハール堆積物なのか識別することを教わった。写真の堆積物は、角礫が本質岩片ばかりで、かつ風化程度も同じであり、火砕流の可能性がある。(9/12)

★岩手一戸トンネル

 義母の卒寿祝で一戸に出かけた。家のすぐ近くに新幹線岩手一戸トンネルの出口がある。つい先日の9日に開通したばかり。全長25.81kmで、陸上トンネルでは世界最長とのこと。(9/17)

★浪打峠の交叉層

 同じく、家の近くに国の天然記念物「浪打峠の交叉層」がある。久しぶりで見に行ってきた。鮮新世末の松山層のクロスラミナである。百人一首の「末の松山波越さじとは…」はここで詠われたという説がある。(9/17)

★出雲大社

 地質学会が松江であった。何しろ鹿児島から松江には大変行きにくい。福岡経由の便は1日1往復しかない。大阪に飛びバックする手もあるが、それもしゃくなので、前日に出かけ、出雲大社を参詣することにした。偶然発掘中で、古代の本殿の柱(写真)を見ることができた。3本1組で鉄の輪をはめ、支柱としたという。40mもの高層建築だったというから、すごいものだ。ずっと前だが、建築会社のエンジニアが古代出雲大社の建築について書いた本を読んだことがある。実際の発掘現場が見られて感激した。(10/1)

★上野原トンネル落石処理

 東九州自動車道上野原トンネル坑口には剱岩というロッククライミングの名所がある。これをカットして取ることになった。上からベンチカットしてきたが、いよいよオーバーハング部分を強制的に落下させるという。その決定的瞬間を見学させていただいた。重量26トンの巨大な石が落ちてくるところはすごかった。(10/4)

★清水の湧水

 南薩道路の環境アセスに行ってきた。川辺ダムから川辺町宮下までの6.5kmである。有名な鳴野原のシラスドリーネを迂回することになっている。貴重な地形なので、残してもらってありがたい。途中、環境庁の名水100選に選ばれた清水の湧水に立ち寄った。シラス崖の直下に湧き出す湧き水である。さほど冷たくはなかったが、大変きれいだった。地下水汚染をしないような配慮を求めた。(10/12)

★シラスドリーネ

 先日は委員会だったから自由行動をするわけにはいかない。そこで、休日に妻とドライブに出かけ、シラスドリーネを見てきた。数年前、学生が卒論で研究したことがある。深さ10mを超すものもある。ドリーネの中には木が植えてあり、窪地らしい写真は撮れなかった。もちろん、岩屋公園や磨崖仏、さらには八瀬尾の滝など観光地にも行き、奥さん孝行もやった。こちらが主目的なのは当然である。(10/14)

★川辺ダム

 ドリーネから足を延ばして、建設中の川辺ダムへも行ってきた。ほとんど天端付近まで完成していた。溶結凝灰岩地帯に造ったダムである。(10/14)

★十津川

 十津川災害111周年記念集会があった。多くの村民が北海道へ移住したとして名高い災害である。奈良教育大の実習林に泊めていただいてシンポジウムを行った。20日には崩壊現場の巡検と、村民向け講演会があり、私も「土砂災害とのつき合い方」という講演をさせられた。写真は唐笠山崩壊跡地である。天ノ川をせき止め塩野新湖を形成したという。(10/21)

★鎌原火砕流

 斜面災害研究推進会議の巡検で浅間に行ってきた。写真は鎌原の観音堂である。今は15段の石段だが、太鼓橋の下にあと35段が埋まっている。天明の浅間大噴火の際、鎌原火砕流で埋まったのである。1979年の発掘で、母親を背負った親孝行な娘(嫁?)の遺体が発見されたとして名高い。遺体が残っていたからには、それほど温度は高くなかったはず、火砕流というよりは土石なだれだったのでは、といった議論があるという。(10/28)

★道路防災ドクター

 建設省の道路防災ドクターで大隅半島の国道を見て回った。いつもは姶良カルデラ壁の急崖だけだったが、今回はシラスや桜島島内の溶岩までチェックした。途中、垂水市内の国道220号直下に旧日本軍の地下壕が発見されたとのことだったので、鹿屋陥没事故との関連で見せていただいた。海食崖に直接入口がある。入口は数ヶ所あり、内部ではつながっているという。斜め上には明かり取りか換気口か小さな穴も開いていた。ここは垂水火砕流の標識地の一つでもある。(11/14)

★オーストラリア露天掘炭坑

 メルボルンでGeoEng2000という学会があった。Technical TourでLa Trobe Valleyに行った。プログラムには"La Trobe Valley Slope"とあったので、谷間の地すべりかと思っていたら、大平原のようなところが谷である。そこに褐炭の露天掘炭坑があった。石炭というより亜炭に近い品質の悪い代物だが、ともかく埋蔵量が桁違い。火力発電所がセットになっており、いわば電力の現地生産である。これなら採算がとれるに違いない。
 石炭を採掘すると露天掘の床は盤ぶくれを起こし、法面では鉛直な応力解放割れ目が発生してすべり出すのだそうだ。どうもこれがslopeと書いてあった正体らしい。いやはや大陸はスケールが大きい。(11/26)

★出水活断層

 出水活断層の現地検討委員会が開かれ、日添地区のトレンチを見学した。前回調査では、地すべりなのか断層なのか判断しかねたところもあったが、今回のトレンチでは活断層であることは疑いないと思った。問題は最新活動時期を特定することである。(12/23)

★会議・講義・講演・その他

1月 日本応用地質学会九州支部20周年記念誌編集委員会打ち上げ(霧島)
1月 道路防災ドクター検討会(鹿児島)…講演
1月 SPCウォール工法研究会技術講習会(熊本)…講演
1月 木村敏雄先生を囲む会(東京)
2月 日本応用地質学会九州支部幹事会(福岡)
2月 地すべり対策技術協会九州支部研修会(福岡)…講演
3月 日本学術会議地質学研究連絡委員会(東京)
3月 地質調査所産官学連携推進委員会(つくば)…講演
3月 日本地質学会総会(つくば)…講演
4月 鹿児島県地質調査業協会研修会(鹿児島)…講演
4月 日本応用地質学会九州支部幹事会(福岡)
4月 日本学術会議地質科学総合研連(東京)
4月 環境地質科学研究所評議員会(新潟)
5月 日本応用地質学会九州支部評議員会・総会(福岡)
5月 東京地学協会評議員会・総会(東京)
5月 Hazard2000(徳島)…講演
5月 日本応用地質学会評議員会・総会(東京)
6月 日本情報地質学会評議員会・GEOINFORUM2000(大阪)
6月 日本学術会議地質学研究連絡委員会(東京)
7月 笠之原道路災害調査検討委員会(鹿屋)
7月 日本学術会議地質科学総合研連(東京)
7月 茨城大学理学部集中講義(水戸)
7月 「地域防災データ総覧―風水害編」編集委員会(東京)
7月 大阪市立大学理学部地球学科(大阪)…講演
7月 21世紀の地学教育を考える大阪フォーラム(大阪)
7月 日本地学教育学会第54回全国大会(鹿児島)…講演
9月 笠之原道路災害調査検討委員会WG(鹿児島)
9月 鹿児島県地質調査業協会理事会(鹿児島)
9月 日本地質学会第107年年会(松江)…講演
10月 笠之原道路災害調査検討委員会(鹿児島)
10月 鹿児島県環境影響評価委員会(南薩)
10月 十津川災害111周年シンポジウム(十津川)…講演
10月 斜面災害研究推進会議(四万温泉)
10月 「地域防災データ総覧―風水害編」編集委員会(東京)
11月 日本応用地質学会九州支部研究発表会(福岡)
11月 道路防災ドクター(鹿屋)
11月 GeoEng2000(メルボルン)…Invited Poster発表
12月 地質調査所産官学連携推進委員会(つくば)
12月 日本応用地質学会九州支部合同役員会(福岡)
12月 日本学術会議地質学研究連絡委員会(東京)
12月 信州大学理学部集中講義(松本)
12月 信州大学自然災害・環境保全研究会…講演
12月 鹿児島県県民防災研修センター整備検討委員会(鹿児島)
12月 鹿児島県活断層調査検討委員会(出水)
12月 笠之原道路災害調査検討委員会(鹿児島)

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連絡先:iwamatsu@sci.kagoshima-u.ac.jp
更新日:2000年12月24日