本の紹介:マイケル・ウェランド著 林裕美子訳『砂―文明と自然』

岩松 暉(応用地質, 2011)


 砂というと応用地質学会会員は液状化する沖積砂、工学的基盤としての洪積砂といった力学的側面を思い浮かべるだろう。しかし、砂にはいろいろな側面がある。一粒の砂の話から、砂丘のような集団としての砂の挙動へ、さらにはプレートテクトニクスから考古・神話・文学・芸術の世界へと話題があちこちに飛び、ついには天体の砂にまで及ぶ。著者の博覧強記ぶりがよく分かる。砂(粒状物質)に関する読んで楽しい百科全書である。米国自然史博物館ジョン・バロウ賞を受賞した。

第1章 砂つぶの生い立ちと性質
第2章 砂が集まる不思議な世界
第3章 砂が連想させるもの―大きな数
第4章 川から海へと旅する砂つぶたち
第5章 波、潮流、ハリケーンにもまれる砂の旅
第6章 風に吹かれてできる砂漠
第7章 過去を証言する砂
第8章 砂が連想させるもの―伝承と芸術
第9章 人の生活の中で活躍する砂
第10章 地球を超えて、時間を超えて
エピローグ ツタンカーメンの砂漠ガラスの謎

(岩松 暉)

築地書館 A5判 419頁 本体価3,000円 2011年8月刊

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更新日:2011年9月日