書評 松岡達英著『震度7 新潟県中越地震を忘れない』

専務理事 岩松 暉(GUPI Newsletter No.18, p.3, 2005)


 著者の松岡氏は新潟県魚沼市川口町にアトリエを持つ絵本作家です。長岡で自然に囲まれて育ったことから、動植物に興味を持ち、自然を題材とした絵本を書き続けておられます。鎌倉市に自宅があるのですが、少年時代に経験した自然を求めて川口町にアトリエを作ったのだそうです。
 2004年10月23日運命の日、家族で川口町に滞在、地震を経験します。近所のホテルが布団や食事を供給してくれたこと、重い腎臓病の息子さんの搬送に皆が協力してくれたことなど、地震直後の暖かな助け合いの様子や親しい方々の経験談がスケッチや写真入りで紹介されています。
 ある日何気なく地面を見ると1輪のリンドウに目がとまります。自然は何事もなかったかのようです。われわれに恵みを与えてくれる山も川も水も地震のような地殻変動がもたらしたもの、自然の大きさに思い至ります。しかし、被災して落ち込む自分を元気づけてくれたのも人間です。自然と共に生きている人の強さもこの地震は教えてくれました。「帰ろうと思う。もう一度、あの美しいふるさとへ。」と結んでいます。
 巻末には子どものための絵入り地震マニュアルが付いています。

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更新日:2005年5月2日