金子勝著『2050年のわたしから』に寄せて

専務理事 岩松 暉(GUPI Newsletter No.22, p.3, 2005)


 金子勝慶大教授の著書『2050年のわたしから』(講談社刊)が話題を呼んでいます。この十数年続いている傾向がそのまま続けば、2050年にはどうなるかというシミュレーションのお話です。それによれば、2050年には「経済はとっくに破綻、政治も全員世襲の閣僚が牛耳り、衆院選の投票率はゼロになる。正社員もゼロで全員フリーター、老後の保障もない。合計特殊出生率は0.01になり誰も子供を産まない。農家もなくなって山は荒れ、熊が餌を求めて町を徘徊している」ような「全てゼロ」の社会になるのだそうです。もちろん、生活習慣病のようにこのままずるずる先送りしていてはダメだと警鐘を鳴らすためにわざと直線回帰を当てはめているのです。ちゃんともう一つの希望のシナリオも用意されています。一読に値する本だと思います。お勧めします。
 さて、これを真似て地質にも当てはめてみましょう。図は全地連の公表している地質調査事業量の推移です。この傾向が続けば2050年を待たず2015年には全く仕事がなくなってしまうでしょう。赤字国債を乱発して公共事業を盛大にするよう政治に働きかけるのか、官需頼みは止めてコンテンツ・サービス産業として転身するのか、はたまた第三の道を模索するのか、ここが考えどころだと思います。現状では50代の優秀な技術者を高給との理由だけでリストラして一息ついているようですが、これでは30・40歳代に過重負担がかかり過労死さえ出かねません。そもそもリストラクチャリングとは経営資源を縮小して業績を改善する守りの経営手法で、株主に配当はできるでしょうが、会社の発展は望めません。一方、リエンジニアリングという言葉があります。CS(顧客満足度)を高めるため、ビジネスプロセスを抜本的にデザインし直すことをいいます。その際、情報技術をフル活用し、企業体質や構造を抜本的に変革して企業生産性を高め新たな競争力を構築する、つまり攻めのリストラ手法です。今必要なのはこのリエンジニアリングではないでしょうか。また、顧客は一体誰なのか熟考を要します。いずれにせよ、金子氏のいうように無為無策ではじり貧になることだけは確かです。

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更新日:2005年8月18日