岩松 暉著『地質屋のひとりごと』

童話 4


はじめのぼうけん

(1)

 はじめちゃんは 2さい, やんちゃぼうずです。
なんでも おもしろくて たまりません。
いぬを みつければ, すぐ ついていきます。
いつも ちょろちょろしていて, おかあさんは めを はなせません。

(2)

 きょうは すなばで あそんでいます。
でも, ひとしくんも カーくんも きません。
ひとりでは おやまを つくっても トンネルを つくっても つまりません。
そうだ, おねえちゃんと あそぼう。
いいことを おもいつきました。

(3)

 おかあさんは はじめちゃんが いないことに きがつきました。
こうえんにも いません。
グリーンベルトにも いません。
スーパーでしょうか。
おかあさんは じてんしゃに のって, ひっしに さがしました。

(4)

 ゆうかいでしょうか, こうつうじこでしょうか。
おかあさんは なきごえで 110ばんに でんわしました。
パトカーが だんちの なかを ほうそうして まわります。
「みなさまに おたずねします。 あかい チェックの ジャンバーをきた
 2さいぐらいの おとこのこを みかけたかたは
 こうばんまで ごれんらくください。」

(5)

 おねえちゃんは ようちえんに いっています。
はじめちゃんは おかあさんと ようちえんの うんどうかいに きたことが あります。
グリーンベルトにそって まっすぐ いけばいいのです。
トコトコあるいて いきました。

(6)

 はしが ありました。
はしのしたでは かにが たくさん あなの なかから でてきて
おいでおいでを しています。
ちょっと いってみましょう。

(7)

 つぎは しんごうです。
ちゃんと あおになるまで まちました。
ぼくは もう おにいちゃん なんだぞと, すこし いいきぶんです。

(8)

 しんごうを わたると, もう だんちも みえません。
ようちえんも みえません。
グリーンベルトの ガジュマルが おこったように みています。
だんだん しんぱいに なりました。

(9)

やっと ようちえんの オレンジいろの たてものが みえてきました。
はじめちゃんは はしりました。
ころんでも なかないで はしりました。
「おねえちゃん!」
ももぐみさんの へやで おねえちゃんを みつけると,
なんだか きゅうに なきたくなりました。

(1985.9.30 稿)


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更新日:1997年8月19日