岩松 暉著『地質屋のひとりごと』

明日の地質学をめざして 7


ナチュラリスト養成大学を!

●私は大学で地学を教えている。昔の学生は山の好きな者が多かった。今は偏差値による輪切り。コンピュータが選んでくれたに過ぎない。しかも,みんな都会の進学校育ち。連想ゲームをやってみる。自然→田舎→喫茶店もない→イヤなところ。これではなまじ地学を教えると,自然破壊・列島改造の先兵を世に送り出すことになる。
 一方,教える側はどうか。学問は専門分化し,対象を細かく分析的に見ることによって発展してきた。若手は一層タコツボ化している。自然をトータルとしてとらえる観点は皆無に近い。
 そこで提案。どこか自然の恵み豊かな高原にでも,ナチュラリスト養成の大学を作ったらどうか。動植物・地理・地質といった自然科学だけでなく,歴史・民俗・地域経済といった人文社会科学も含めて,総合的な教育を行う。オープンフィールド博物館も併設し,地域の自然に根ざした教育を重視する。
 こんな大学をナショナルトラストのように全国の浄財を集めて作りたい。賛同者を募る。

(1987.8.14稿 『自然保護』1987年9月号 会員ルーム掲載)

< 反 響 >
九月号の鹿児島県岩松さんへ
 はじめてお便りします。今日は自然保護九月号の会員ルームの中に紹介されました“ナチュラリスト養成大学”についてのことなのです。お話により,”本当のナチュラリスト”という感じで感動しました。私の学校はそれらしき学校,つまり農業高校なのですが,やはり今の農業問題などに少しは首をつっこんでいるつもりです。しかし,“FFJ”という一つの連盟の学校本部役員をしていましても,ここでは役に立つということがないのです(ほんの一会員にすぎない)。そこで,このことは大きく感動したのです。昔からいつかナチュラリストになりたいと願っており,こうして計画されていることはとても夢のように思えます。今私は十八歳ですが,いつか実現できるようにお願いしたいです。賛同者としてお便りしました。(神奈川県・相沢直美)

(『自然保護』1987年11月号 会員ルーム掲載)


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更新日:1997年8月19日