無聊/叔母逝く/昼寝/ホモ・フローレンシス/隠れ念仏洞/運動会の練習/までいの力/長寿まつり/敬老祝/中島敦/台風一過/白熊/宮崎県霧島市/彼岸花祭/匠の世界

鹿児島のご隠居(2012.09)


★無聊

 耐震補強工事が続いている。大工さんがセッセと働いているときに、ブラリと散歩に出かけるのは気が引ける。まして図書館などには出かけられない。2階の書斎に閉じこもって本ばかり読んでいたら飽きてきた。ふと外を見たら庭のサルスベリがきれいに咲いていた。この花は花期が長いから、きっとだいぶ前から咲いていたのだろう。この間読んだ本は島原市前市長吉岡さんの『一陽来復』、普賢岳噴火災害の復興に全力投球されたことがよくわかり、感銘を受けた。島原にジオパークの話をしに行った時にお会いした市長さんで、鹿大OBである。頂戴した著書では上野将司さんの『危ない地形・地質の見極め方』と田崎和江さんの『地質屋の「なんとかしなきゃ」』を読んだ。前者は、数多くの現場経験に基づいた事例集で、「答えは現場にある」との著者の実践哲学がよく分かり、若手地質技術者必読の本だと思った。後者は、微生物による放射能除染を提唱している100ページほどの冊子である。世界を股にかけて活躍している彼女らしいバイタリティが躍如としている。この手法が有効ならすばらしいと思った。(2012/9/4)

★叔母逝く

 叔母が亡くなった。母の末の妹である。最初に会ったのは小学校2年生、台湾から引き揚げてきた時。父は蒋介石政府に台湾人に石油採掘技術を教えてから帰るよう徴用されたので、母子3人で引き揚げてきた。母の実家があった長岡は空襲で焼け野原だったが、土蔵だけは焼け残った。蔵の中にあった少国民世界文学全集を読むのが楽しみで、よく遊びに行った。私の本好きはこのせいである。「アラジンの魔法のランプ」を読んでいた時に、魔法でオムレツが出てきた。叔母に「オムレツってなーに」と聞いたところ、「オムレツも食べたことがないの、可哀想に」と作ってくださった。その美味しかったこと、魔法のよう、今でも忘れられない。半年ほどして母は内職の過労で死亡、父の帰国まで孤児状態だった。母代わりに一層可愛がってくださった。3ヶ月前、阿賀野市に行く機会があった。虫の知らせか、新潟市まで足を延ばして、叔母に会ってきた。この時には元気だったのに…。生前お目にかかれたのがせめてもの慰めである。優しく穏やかで明るい叔母だった。ご冥福を祈る。合掌。(2012/9/5)

★昼寝

 昨日から水道タンク下の法面の草刈りが始まった。カンカン照りのところを一生懸命働いている。昨年までは法面工法が見えないくらい上っ面を刈っていた。今年の人は真面目なのだろう。型枠工が出てきた。昼休み、カンカン照りの小段で昼寝をしている。寝返りでも打ったら大変だ。昔、学生時代、海岸線の地質調査をしていた。やはりカンカン照りのところで昼寝をしたものだ。当時はクロンボ大会などがあり、日焼けが健康の象徴だった。作業員の昼寝に昔の自分を見る思いだった。(2012/9/7)

★ホモ・フローレンシス

 NHKオンデマンドで「謎の小型人類」を見た。インドネシアのフローレス島で発見されたホモ・フローレンシスは、脳が400mlしかないのに石器を使った狩りをしていたらしい。新種のホモサピエンスとか島嶼化とか、いろいろ説があるようだが、チンパンジーとの比較の話が心に残った。チンパンジーは今を生きているのに対し、人類は想像力があり、過去や未来を考えることが出来るのが特色という。昨今のように当期決算が赤字か黒字かだけで一喜一憂している世の中は差し詰めチンパンジーのレベルである。小泉構造改革とはチンパンジー化だったのだろうか。(2012/9/10)

★隠れ念仏洞

 わが家の耐震工事で家に縛り付けられていたが、今週は建設会社の都合で休み、しばらくぶりに解放されたので、鹿児島市指定文化財の田の神像でまだ見ていないものを撮影に郡山まで出かけた。帰途、「隠れ念仏洞→」と書かれた看板を見たので立ち寄ってみた。かなりの標高を登る羽目になった。途中、露頭を刻んで階段になっているところがあったが、これは後世観光のためにつけたのだろうから、当時は険しい山道だったに違いない。それまでして信仰を守ったのだろう。(2012/9/11)

★運動会の練習

 わが家は中学校の門前にあるがいつもは静かである。少子化のためか、住宅側に面した棟は図書室など特殊教室に当てられ、裏側の棟が教室に使われているからである。ところが今日はとても賑やか、ラジオ体操の音楽、天国と地獄、栄冠は君に輝くなどなど、時に応援の太鼓も聞こえる。きっと運動会の練習をしているのだろう。(2012/9/12)

★までいの力

 病院の待合室で『福島県飯舘村にみる一人一人が幸せになる力 までいの力』を読んだ。周知のように飯舘村は原発事故で避難を余儀なくされている。3.11以前に準備されていて3.11後出版された本だ。「までい」とは真手のことで、「手間ひま惜しまず丁寧に心をこめてつつましく」という意味とのこと。平成の合併にも組みせず、スローライフな村づくりに取り組んできた記録である。村営本屋さん「ほんの森いいたて」まであり、ふるさと納税のお金でラオスに学校を作ったという。思いやりの心、人への優しさに充ち満ちた暮らしがそこにあった。村長の巻頭言に原発事故のことが急きょ触れられてあったが、本文は3.11以前の村の生活が紹介されている。何も書かれていないから、なお一層原発事故に憤りを感じる。近頃感銘を受けた本の1冊だ。(2012/9/13)

★すこやか長寿まつりグラウンドゴルフ大会

 例年の長才まつりがすこやか長寿まつりと改称され、グラウンドゴルフ大会があった。わが団地老人クラブからも2チーム参加したが、慣れない芝で成績はさんざん。でも楽しい1日だった。今日は市長ご本人の開会挨拶があった。聞くところによると、いつもは代理だが、選挙の年だけはご本人が来られるとのこと。(2012/9/14)

★敬老祝

 いつもの通り、グラウンドゴルフをしていたら、町内会婦人部長さんが現れ、敬老の日のプレゼントをくださった。一軒一軒回るより手間が省ける。賢い。中味はいつもの通りお茶とお菓子のセットだったが、今年はお祝いの手紙が添えてあった。今年の会長さんはじめ役員の方はきめ細やかな気配りが行き届いている。なお、妻もめでたくお祝いを頂戴出来る資格ができた。(2012/9/15)

★中島敦

 台風16号が接近中である。時折、強い雨風が吹く。1日中閉じこもりっきり。無聊を慰めるために、青空文庫にアクセスしてみた。著作権の切れた古典がボランティアの手で掲載されている。さて、何を読もうか。中島敦の名前が目に止まった。山月記を教科書で読んだことがある。以来、名人伝・李陵などなど、岩波文庫で何度も読んでいるのに、何故か心惹かれて、また、読んでしまった。博識、とくに漢籍の素養には敬服するが、それだけではない。文体が名調子だからか。それだけでもない。やはり、読後、何ごとか考えさせるものがあるからだ。(2012/9/16)

★台風一過

 昨夜は雨戸を閉めて寝た。夜半に暴風圏に入ったらしい。台風一過の秋晴れとはいかないが、午後から雨が上がった。早速奥方の命令で庭木の剪定、敬老の日だというのにヤレヤレ。それからやっと敬老祝の最中にありついた。何と「火山桜島」とある。餡が割れ目から大きくはみ出している。割れ目噴火を意識したのだろうか。実は文明・安永・大正と大噴火では山腹の対称の位置から溶岩が流れ出しており、まさに割れ目噴火なのだ。(2012/9/17)

★白熊

 講演を頼まれて昼間天文館のホテルに出かけた。天文館は現役時代追い出しコンパなどで年に1回くらいしか来たことがない。車に乗っていることが多く、駐車場難のせいもある。今回珍しく昼間来たので、講演会解散後、天文館名物「白熊」を食べに寄った。フルーツのたくさん載ったかき氷のことである。昔、学生が帰省から帰ってきて、「この白熊をたべると、あー鹿児島に帰ってきた、という気がする」と言っていたので、一度は食べてみたいと思っていた。ベビーサイズでも結構ボリュームがあった。(2012/9/19)

★宮崎県霧島市

 鹿大が特任教授に任命するという。学長との契約書を届けに鹿大に出かけた。生協書籍部で『図解でわかる富士山大噴火』なる本を買った。九州でも噴火活動が活発化しているとあり、「宮崎県霧島市の霧島山新燃岳噴火の様子」とあった。また、明らかに雲仙普賢岳のことなのに開聞岳と書いてあるところもあった。著者は地学科出身らしいが、東京の人から見ると九州は小さな一つの島で、どうも細かなことは区別がつかないらしい。霧島山宮崎鹿児島両県にまたがっているが、宮崎県とのイメージが強いようだ。地鶏も薩摩鶏に比して宮崎地鶏のほうが有名である。鹿児島はお茶も焼酎も本場なのにブランドは静岡・宇治や大分に軍配が上がる。鹿児島人は宣伝が下手だ。(2012/9/21)

★柊野ひがんばな祭り

 今日は自宅前の中学校で運動会がある。例年、綿菓子屋が出店して、ディーゼル発電機の音がうるさい。快晴を幸いに出かけることにした。さつま町の柊野で彼岸花が見事だというので行ってみた。偶然、ひがんばな祭りをしていた。もっとたくさん球根を植えたのだが、鹿と猪に食べられてしまった由。それでも見事だった。そう言われて見てみると、畑はネットや電気柵に囲まれていた。要所要所で小学生が解説をしている。暗記したとおり、一生懸命説明をしているのがほほ笑ましい。地元婦人会手作りの味噌べら弁当を食べた。要するにお煮しめである。なかなか美味しい。鹿肉の焼肉も売っていた。帰途、紫尾温泉に回り、区営温泉神の湯に入った。神社の社殿下から湧出しているので有名なところだ。(2012/9/23)

★匠の世界

 耐震補強工事でこの頃、いろいろな職種の方々が次々に訪れる。いずれも手早く、かつ、見事な仕上がり、ほれぼれする。若いときから厳しい修業をしたのだろう。脱帽である。この頃は大学全入時代、驚くほど低学力だし、ちっとも勉強しようとしない、もうイヤになったからと、定年前に大学教員を退職した友人がいる。昔は、上級学校に行く者は一生懸命勉強したし、中卒で就職する者は手に職を付けるために厳しい修業をした。上級学校に行かなくても高い社会的ステータスと高い賃金を保障すべきだった。今のままでは研究開発能力も失われるし、技術立国を下支えした匠たちもいなくなる。国の未来が危ない。(2012/9/26)
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更新日:2012年9月26日