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鹿児島のご隠居(2009.01)


★出水

 今日は小春日和、出水の万羽ヅルを見に何年ぶりかで出かけた。ここに来ているのはナベヅルやマナヅルで、タンチョウと違って白くない。また、鳴き声もお世辞にも美しいとは言えない。それにこれだけいると臭い。しかし、大空を舞う姿は優雅であった。世界中のナベヅルがほとんどここに集まるのだという。伝染病でも流行ったら絶滅である。関係者もやはり心配しているらしく、佐賀県伊万里市の長浜干拓地に分散する実験をしている由。(2009/1/3)

★枕崎

 今日も暖か、枕崎方面に出かけた。川辺の天然橋を探すのに一苦労したが、その後、坊津に回り、一乗院跡(坊泊小学校)を見学した。校庭の隅に仁王像があったが、修復の跡がはっきりわかる。廃仏毀釈で谷川に投げ込まれていたものを修復したのだという。明治維新の主役は薩長、薩摩は明治政府の方針である廃仏毀釈を率先垂範、徹底的にやったのだろう。
 帰路、枕崎へ向かった時に、すばらしい眺望のところがあった。本当は立神まで見えたのだが、無粋な建物が写るのでカットした。(2009/1/4)

★海舟座談

 昨年の大河ドラマ「天璋院篤姫」で勝海舟なる人物に興味を持った。それに墨田区に住んでいて、海舟の銅像や生誕の地などよく見ていたからである。そこで、岩波文庫の巖本善治『海舟座談』を読んだ。鳥羽伏見の戦いで幕府軍が簡単に負けたのは錦の御旗のためと言われているが、果たしてそうか長く疑問だったが、これを読んで氷解した。兵力の差は歴然だったし、軍艦は幕府が持っていたから、大砲を撃ち込めば、わけなく追い散らすことが出来る。しかし、そうすると、薩摩は天子を擁して九州に逃げ、立てこもるだろう。当時の幕府の財政では外債を募集して戦費に充てなければならないし、それでも5年しか幕府は持たない。そんなことをしたら、日本国に莫大な借財を残すことになるから、やらなかったとの海舟の言である。この時、時の大蔵卿松方正義が座布団から滑り降りて礼を言った由。薩摩でも軍艦のことをずいぶん心配して慎重論が大勢だったが、西郷だけが、勝はそんなことをするはずがないと、押し切ったそうである。英雄は英雄を知るとは、まさにこのことだ。海舟の法名は大観院殿海舟日安大居士である。大観居士とは、常に大局を見ていた海舟にふさわしい。
 ところで、現在の政治家はどうだろうか。国債を乱発して子孫に莫大な借金を残している。国家百年の大計どころか、個人の選挙しか考えていない。嗚呼。(2009/1/8)

★初雪

 寒波襲来である。南国鹿児島にも初雪があった。なかなか風情がある。灯篭の上にも積もらないかと待っていたら、すぐ融けてしまった。さすがに小鳥もやってこない。寒くて巣に閉じこもっているのだろうか。(2009/1/10)

★ヒヨドリ

 天気予報は曇時々雪だったのに晴れてきた。ヒヨドリがクロガネモチの木にやって来た。先日まで赤い実をたくさん付けていたのに、今はほとんど食べ尽くされてしまった。この鳥の鳴き声は、とてもきれいとは言えない。やはり図体が大きいので、ヒヨドリがやってくると、メジロやウグイスは逃げて行く。(2009/1/13)

★温泉

 妻が軽いぎっくり腰になった。それで温泉に行くことにした。鹿児島は火山国、市内の銭湯はすべて天然温泉である。郊外に行けば旧市町村ごとに必ず公営温泉がある。新しくて設備も良い。しかし、今日は、古くからある民営のところに行くことにした。民営だから料金は少し高いが、湯量が豊富で源泉掛け流しである。毎分650リットルの温泉が出ているとか。ウィークデーの昼間のこととて空いている。一人で露天風呂に浸かり、鹿威しが時折カタン・カタンと鳴る音を聞きながら、ボーッと空を見上げていた。これがリタイアかと実感した。上がってから、瓶入りのコーヒー牛乳を飲む。これまた懐かしいものがまだ存在していた。(2009/1/14)

★教師冥利2

 ある研究会に頼まれて講演のため福岡に出かけた。会場でビックリ。会員でもない卒業生がたくさん聞きに来ているではないか。その後の懇親会はさながら同窓会のようであった。本当にうれしく思った。還暦の時もプレゼントの不意打ちで、教師冥利に尽きると思ったが、今回もそう思った。(2009/1/16)

★鑑賞型展示

 北九州市立いのちのたび博物館に卒業生を訪ねた。博物館の展示には「解説型」と「鑑賞型」とあり、近年は後者が主流となっている由。活字離れのマンガ世代の影響ではないかという。ここも鑑賞型で、あまり解説文がない。知りたい人のためにはタッチパネルが用意されている。土曜日だからかなりの入場者がいたが、あまりタッチパネルを利用している人はいなかった。ざっと皮相的に見て、わかったつもりになるのは困った風潮だ。(2009/1/17)

★東田高炉跡

 帰途、駅を降りたときから気になっていた高炉に立ち寄った。八幡製鉄発祥の地らしい。昔は黒い煙がもくもく上がり、八幡の活気の象徴だったそうだ。そういえば、博物館に社宅が再現されていた。私も長屋ではなかったが、子供の頃、石油会社の社宅に住んだことがある。雰囲気はよく似ている。懐かしい。(2009/1/17)

★加世田

 南さつま市の史跡を巡った。鹿児島は徹底的な廃仏毀釈が行われたので、残っている史跡はお墓か遺跡ばかりである。その点、東京には古刹がたくさん残っている。今日は栫之原遺跡と六地蔵塔、それに竹田神社を回った。六地蔵塔は武家屋敷群(写真)の中にあった。戦死者を弔ったのだという。今年の大河ドラマは、またもや戦国もの、さぞ合戦シーンが多いことだろう。多くの戦死者を出す戦争は、今でも続いている。人間はこの愚かな行為を止められないのだろうか。(2009/1/20)

★忙即閑2

 今月も病院の待合室で大岡信『「忙即閑」を生きる』を読んだ。「『落丁』がうまる歓び」と題するエッセイで、「岩波科学の本」を読んで感激した話が載っていた。大岡氏は詩人である。自分の教養に「落丁」があるのに気づき、こども向けの科学の本を読んだのだという。氏は私より年上、脱帽した。翻って、私のほうの教養は落丁だらけである。講談社BLUE BACKSの『中学理科の教科書』を買ってきて生物の勉強を始めることにした。
 「急に漢字のふえた物書き」も身にしみた。ワープロのせいで漢字に自動変換されるから漢字が増えて、全体として黒っぽく見えるようになったのである。書かれた文章は「かすれ文様」がよいのだという。漢字と仮名がバランス良く散りばめられている様子をいうらしい。また、「消す」ことも「書く」ことのうちだという点もうなずける。「消した事実を目の前に見ながら書くことが文章をより生かす」と説く。ワープロ族の私も、消してしまってから、先ほどのほうが良かったと思い直しても、正確に思い出せず困ったことが何度もある。(2009/1/22)

★吹上浜温泉センター

 この頃妻は道の駅に凝っている。安くて新鮮な生鮮食料品が手に入るからである。今日も江口浜蓬莱館に出かけて買い物をした後、足を延ばして市来の吹上浜温泉センターに行った。シルバー割引で200円で入浴できる。ロビーにボーリングのビットが展示されていた。1,200mの最終到達点を掘ったビットだという。(2009/1/23)

★江口浜

 今日は土曜、温泉は混んでいるに違いない。空いているところはないかと、国民宿舎江口浜荘に思い至った。ここの前を国道270号が通っているが、近くに国道3号へ直接出るバイパスが出来て、裏通りになってしまったのだ。全く気の毒である。バイパスの功罪の一つと言えよう。そのためか、割引でなくても料金が200円と安い。しかし、ここの温泉は湯之元から引いているとかで、熱くてなかなか良い。それに東シナ海の眺望が良い。久多島らしい島影も見える。(2009/1/24)
 今日も奥様孝行で同じ温泉にやってきた。さすがに日曜日、泊まり客があったようで、昨日よりは混んでいたが、それでもゆったりできた。例によって浴後瓶入りコーヒー牛乳を飲む。妻の言では、病院のマッサージよりも温泉のほうが良く効くとのこと、まずは祝着。(2009/1/25)

★春間近

 今日は若い友人が訪ねてきた。久しぶりに学問的ディスカッションをして、大いに刺激を受けた。脳の活性化のためには、こうした機会がもっと欲しいものだ。
 一方、妻のほうは天気が良かったので指宿開聞方面へドライブに行った由。菜の花マラソンで有名な指宿のこと、当然のことながら、あちらこちら菜の花が満開できれいだったそうだが、枚聞神社境内で桜が咲いていたとビックリしたそうである。写真を撮ってきてくれた。春ももうすぐそこまで迫っている。(2009/1/28)

★Global Corporate Citizenship

 NHKクローズアップ現代でダボス会議の主宰者である世界経済フォーラム(WEF)理事長クラウス・シュワブ氏がGlobal Corporate Citizenshipという言葉を強調していた。企業の社会的責任(CSR)よりは広い概念らしい。WEFについては賛否両論ある。言葉の上だけとの批判もあろうが、やはりこれからの世界にはGlobal Corporate Citizenshipが必要だと思った。(2009/1/29)
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更新日:2009年1月29日