技術屋魂/湯之元稲荷神社/冠岳神社/癒しロボット/瓢湖/ヒ素汚染/叙勲祝賀会/親戚まわり/川内川/アポ/薩摩川内/オムソーリ/忙即閑/電動車椅子/碎啄/家族/シラスドリーネ

鹿児島のご隠居(2008.12)


★技術屋魂

 プリンターが故障したし、部品もメーカーで品切れとのことだったので、新品を買おうと思っていていたら、息子が修理法をネットでいろいろ調べてくれた。やはり工学部卒としては、おめおめ引き下がるのはいやだったのだろう。そこで、東京出張の折、秋葉原に寄ってみた。さすが天下のアキバ、部品の在庫があった。お陰でまた、使えることになった。ちょうど良い機会だから、多機能の新型購入を企んだことを反省させられた。(2008/12/1)

★湯之元稲荷神社

 天然記念物ヤッコソウに再チャレンジしたが、やはり今年はまだ出ていないようだ。自生地を見てから神社に参拝。解説板を読むと、鹿児島で最も古い稲荷神社とのことだ。(2008/12/2)

★冠岳神社

 仙人岳植物群落の写真を撮りに冠岳に行った。冠岳神社の紅葉はちょっと盛りを過ぎたみたいだったが、それでもとてもきれいだった。この神社の上流には自然に配慮したとか言う砂防ダムがあったが、かえってコンクリート部分が多すぎるように感じた。巨大な徐福像も見たが、徐福伝説で町おこしをしたい気持ちはわかるが、ウーン。(2008/12/2)

★癒しロボット

 お台場の産総研で会議があった。1階に産総研が開発したロボットが展示されていた。アザラシ型の「パロ」がかわいらしかったが、ロボット・セラピーと銘打ってあったので、アニマルセラピーならわかるが、感情のないロボットではいかがか、要するに研究者のお遊びだと思った。しかし、説明を読むと、本物の動物では、アレルギーや感染症などの理由で導入が困難な例もあるとのこと。なるほど。(2008/12/3)

★瓢湖

 水原の親戚を訪ねた後、近くの瓢湖に寄ってみた。30年ぶりである。遠くには雪を頂いた飯豊連峰が見えた。小春日和で暖かく、コート不要だった。瓢湖は江戸時代に干ばつに備えて新発田藩が造成した用水池だったらしい。白鳥よりもカモが断然多く、白鳥は肩身が狭いようだった。しかし、既に6,000羽を越しているというから、昼はどこかへエサを取りに出かけているのかも知れない。周辺の田んぼや畑は有機栽培をしているのだろうかと、気になった。鳥インフルエンザも気になるところだ。(2008/12/4)

★ヒ素汚染

 新潟応用地質研究会に出席し、ヒ素汚染の講演を聴いた。バングラや内蒙古のヒ素汚染が有名である。いずれもガンジス川や黄河など大河地域だから、広大な流域には硫砒鉄鉱などヒ素を含む鉱物を産する鉱山がたくさんあるに違いない。それらから流れ出したヒ素が河口域や内陸盆地に溜まったのだろうと考えていた。ところが、堆積物中のヒ素濃度は、新潟平野や関東平野とさして違わないのだという。問題はヒ素が地下水に溶出濃集する過程にあるらしい。してみると、日本は何でも「水に流す」国だから、救われているのかも知れない。いずれにせよ、単純に考えて思い込んではいけないと痛感させられた。昔から科学的な装いの話で一般市民をだますケースが良くあった。受取る側も単純にすぐ信じ込まずに、キチンとした勉強が必要である。
 本来、この特別講演をされる予定だった吉村尚久氏が当夜亡くなられた。ご冥福をお祈りする。(2008/12/5)

★叙勲祝賀会

 私が助手だった頃の上司が叙勲された。ご本人は賑々しいことはお嫌いだから辞退したかったらしいが、教え子達が集まる口実だと押し切ったようだ。直接指導を受けた人たちに絞った内輪の会にした。したがって、格式張ったものと違い、和やかで楽しい会だった。上の学年の人たちはもう定年を過ぎている。八ヶ岳山麓に移り住み、ボランティアで地質の見学案内をしているとか、太極拳に凝っているとか、活断層の普及書を書いたとか、それぞれ充実した生活をしているようで頼もしかった。次の世代は、会社や学校のトップクラス、今の世知辛い世の中で苦労が多いようであった。若手は子育ての真っ最中、可愛らしい子供を連れて現れた。ほほえましい。(2008/12/6)

★親戚まわり

 この機会に新潟の親戚を全部回った。叔母や義兄もそれぞれ80歳を超えたが、病気と仲良くつき合い、お元気そうで安心した。姪が亡き姉にそっくりなのに胸を打たれた。(2008/12/7)

★川内川

 今日は小春日和、例によって天然記念物の写真を撮りに出かけた。チスジノリが菱刈の湯之尾の滝付近にあるというので、それが今日の主たる目的である。横川の丸岡公園で霧島連山を見ながらお弁当を食べて、湯之尾に行ってみた。がらっぱ公園という公園になっており、水鳥がたくさん群れていた。無料の大型双眼鏡が設置してあった。普通はコイン式なのに、なかなか良い。(2008/12/10)

★アポ

 最近の大学はきれいになった。ダムに税金を投じると批判が出るから、学校の耐震化でゼネコンを救済しているのだという。閑話休題。今大学に行っても、先生方は研究室にいない。かといって実験室にいるわけでもない。会議、会議なのである。元の職場、元の同僚なのに、事前のアポを取らないと会えない次第となる。昔のようにふらっと遊びに行くと、みんなが集まってきてお茶になる、あの和やかさがない。みんなバラバラ、会うと必ず聞かされるのが愚痴。見た目はきれいになったが、内実は寒々としている。(2008/12/12)

★薩摩川内

 南九州自動車道が薩摩川内まで通じたと聞いたので、乗ってみた。昔は1時間はかかっていたのに半分の時間で着いた。道路特定財源など、無駄な道路づくりは止めて福祉に回すべきだ、などと言いつつ便利さは享受している。矛盾。例によって、天然記念物と史跡の写真を撮りに出かけたのである。まず永利のオガタマキ、樹齢800年とかいう巨木である。それから薩摩国分寺。東京の国分寺も見たことがあるが、古代にこんな僻遠の地まで伽藍を作らせた中央集権体制のすごさを思った。最後は可愛山陵と新田神社である。山陵だけあって手が入っていないから、ものすごい巨木がたくさんあり圧倒された。中には大きなウロのある木もあった。中で生活できそうなほど広い。(2008/12/14)

★オムソーリ

 たまたまテレビのスイッチを入れたら、NHKスペシャル「非正規労働者を守れるか」をやっていた。途中からなのでどういう脈絡だかわからないが、神野直彦東大教授が「オムソーリ(Omsorg)」というスウェーデン語を紹介された。原義は「悲しみの分かち合い」という意味とのこと。辞書で調べるとsocial serviceと英訳されている。医療、福祉、教育まで含む社会サービスのことらしい。これでは何とも味気ない。「悲しみを分かち合う」、「お互いにかばい合う」という原語のほうが暖かみがあってすばらしい。競争原理だけが横行して、このオムソーリが忘れられたからこそ、通り魔殺人や親殺し・子殺し、はては食品偽装など、異常な社会現象が起きているのだ。
 最近は「派遣切り」なる残酷な新語も登場した。大体、派遣社員などという制度そのものが人間を使い捨てにする非人間的な制度である。重厚長大産業の時代には、社会資本とは道路建設や設備投資を指していたかも知れないが、日本は元々資源が乏しい国だし、まして今は経済のソフト化が叫ばれている時代である。人材こそもっとも根源的な社会資本であろう。それなのに教育の現場は小学校から大学まで荒廃している。嗚呼。(2008/12/15)

★忙即閑

 病院の待合室で大岡信『「忙即閑」を生きる』を読んだ。朝日新聞コラム「折々のうた」で有名な大岡氏のエッセイ集である。詩人としてだけでなく多方面で活躍されている方は、さぞかし「忙中忙」だろうと思っていたが、さすがである。正岡子規の『病牀六尺』が引用されていた。病苦の床にありながら「愉快でたまらぬ」と書いてあるとか。そこで、今日仕事ができるということは、即、命の証であり、閑暇と愉快の源泉なのだと述べておられる。こちら小人は、先日まで「忙中忙」で心のゆとりもなかったし、365連休の今は、古人の言うとおり「閑居して不善を為す」毎日である。(2008/12/22)

★電動車椅子

 小春日和、例によって史跡巡りに出かけた。息子に運転してもらった。天然記念物や史跡のあるところは辺鄙なところが多い。これが県道かと驚くような狭い道である。三叉路に突き当たった。前の道路を電動車椅子の人がこちらに気づかずに通っている。息子は左折しようとせず、その人が広いところまで行くのを、元の道でじっと待っている。車椅子の横をすり抜けるだけの幅はあるが、驚かせて運転でも誤ると大変だからという。負うた子に教えられた。(2008/12/25)

★碎啄同時

 日頃テレビドラマはほとんど見ない。偶然、NHKで「フルスウィング」というドラマの再放送を見た。ドラマ自体にも感動したが、その中で「碎硺(そったく)同時」という言葉が出てきた。早速、広辞苑で調べてみた。碎はひな鳥が卵の内側からつつくことで、啄は母鳥が外側から殻をかみ破ることを意味し、師家(しけ)と弟子のはたらきが合致することとあった。教育の要点を突いている。私もかつては教育者の一人だった。学生やわが子に対して、適切な時期に適切に「啄」を行ってきただろうか。応用地質学講座は鷹揚な講座だと、応用講座の放牧方式などと言って、自主性に任せることを基本としてきたが、本当にこれで良かったのだろうか。自らの力で「碎」をやれる者には適切な方式であっても、非力な者には不親切だったのかも知れない。などなど反省しきりである。(2008/12/26)

★家族

 NHK大河ドラマ「天璋院篤姫」総集編を夫婦で3晩全部見てしまった。幕末維新ものは、歴史の変転めまぐるしく、わかりにくいので当たらないと言われてきたが、篤姫は異常に高い視聴率だったという。従来の大河ドラマのように凄惨な合戦場面が少なかったこと、女性が主人公だったこと、そして家族をテーマとしたことが原因らしい。現今の世相は、近親殺し、ホームレスなど、家族の崩壊を示唆している。もう一度、家族を見直そうとの風潮が出てきた現れかも知れない。(2008/12/28)

★シラスドリーネ

 友人が帰省してきて会いたいという。そこは地質屋、喫茶店で話をするなど似合わない。一緒にフィールドに出かけた。家族で遊びに行くのと、地質屋同士で行くのとでは、同じ公園に行っても目の付け所が違う。観察が細かくなる。早速議論になった。今までの物見遊山を反省させられた。
 シラスドリーネを見たことがないというので、鳴野原に案内した。ところが驚いたことに、地形図に載っている4箇所の凹地のうち3箇所まで埋め立てられ、その上に家が建っていた。恐らく台地は茶畑として有効利用されているのに、ドリーネは遊休地と見られたのだろう。シラスドリーネは地形レッドデータブックに載っている。そこで、広域農道の路線を変更してもらった経緯がある。その時には役場の人もいたはずである。しかし、引き継がれなかったのであろうか、埋め立てが許可されてしまったのである。役場の人を責めるよりも、重要性を社会的にアピールしてこなかった学者側の責任を感じた次第である。(2008/12/30)

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更新日:2008年12月30日