岩松 暉著『残照』1


残照

 私の家はシラス台地の上にある。残念ながら東側に小山があって桜島は見えない。その代わり、西の丘陵に沈む夕日が見事である。学校の白壁も真っ赤に燃える。刻々と変わる西の空を見ながら、こんなことを考えた。
 4月になった。いよいよ旧地学科最後の1年である。今の4年生を送り出したら、これで名実共に地学科はなくなり、全国唯一を誇っていた応用地質学講座も終焉を迎える。私自身も還暦を迎え、普通なら定年である。65歳定年まではいわばおつりの人生。しかし、たそがれ人生にはなりたくない。ギラギラした朝焼けは無理としても、この夕日のように赤く静かに燃えたいものだ。

(1999.4.1 稿)


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更新日:1999年4月1日